理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: p-011
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ポスター発表
身体的虚弱を呈する地域在住高齢者における歩数と屋外歩行範囲の関連
槇本 豊小林 まり子原田 和宏
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抄録

【はじめに・目的】

身体的虚弱を呈する高齢者において,日々の歩数の増加は歩行能力や下肢筋力の低下を予防するために重要である。行動範囲の広がりは歩数の多さと関連しており,歩行能力の改善やそれに伴う行動範囲の広がりはリハビリテーションの目標の一つとして重要である。しかしながら,屋外における行動範囲の広がりは必ずしも歩数の多さに関与しないとする報告もある。広い屋外歩行範囲を有する高齢者であっても,多くの歩数を見込めるとは限らない可能性がある。本研究の目的は,身体的虚弱を呈する高齢者における屋外歩行範囲の広がりが歩数の多少に関与するか否かの検証を行うことである。

【方法】

対象者は中山間部の一医療機関の通院および通所リハビリテーション利用者で,身体的虚弱を呈する高齢者21名(平均年齢79.6±7.2歳,女性66.7%)とした。身体的虚弱は,日常生活動作が自立しており,1㎞以上の連続歩行困難者または日常生活での不整地歩行や階段昇降の非自立者であることとした。歩数は三軸加速度計式活動量計を使用し,対象者の1日あたりの歩数を記録した。屋外歩行範囲は自己質問紙により「敷地内および自宅周辺の歩道まで歩く」を近隣歩行者,「家の近くの店や友達の家および興味のある場所まで外を歩く」を地域歩行者とした。屋外歩行範囲と歩数の関連性の分析は屋外歩行範囲別に分けた1日あたりの歩数の平均値との比較を行い分析した。統計処理にはSPSS ver.24を使用し,有意水準を5%とした。

【結果】

歩数は近隣歩行者群が1797.0±1420.1歩/日,地域歩行者群が2076.2±1575.1歩/日であり,両群の間に統計的有意差を認めなかった(P=0.622)。

【結論】

屋外歩行範囲と歩数は共変しておらず,地域歩行者であっても歩数は多くない。身体的虚弱を呈する高齢者の歩数の促進を図るために,屋外歩行範囲の広がりではなく,歩行可能な範囲内で行われている活動に注目することが重要であることを示唆していると考える。

【倫理的配慮,説明と同意】

すべての対象者に対して書面と口頭にて研究内容と目的を説明し,書面にて同意を得た。本研究は吉備国際大学の倫理審査委員会の承認を受けて実施した。本研究の対象者は,理解能力の保たれている高齢者であったが,必要に応じて家族の同意を得た。

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© 2019 日本理学療法士協会
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