主催: 日本理学療法士協会
会議名: 第53回日本理学療法学術大会 抄録集
開催日: 2018/07/16 - 2018/12/23
p. H1-68
変形性膝関節症(膝OA)は痛みや日常生活動作の障害,QOLの低下などを招く退行変性疾患である。日本ではレントゲン画像から少なくとも一側に膝OAを有すると診断されるものは60歳以上の約62%を占め,推定患者数は約2530万人とも報告されており(Muraki, et al. 2009.),我々の日常の臨床でも非常に多くの患者に遭遇する。また我が国の要介護原因疾患として上位に挙げられる疾患であり,理学療法はその治療において非常に重要な役割を担っている。
膝OAに運動療法や患者教育などを通した理学療法が有効であることは,多くの膝OA診療ガイドラインに明記されている。例えばOsteoarthritis Research Society International(OARSI)のガイドラインでは,治療開始当初は医療従事者により提供される受動的な治療ではなく,自己管理と患者主体の治療に重点を置くことが推奨されている。一方で個々の研究報告では理学療法士による徒手的な治療が有効であったという結果も報告されている。徒手的な治療によって関節の動きや筋の働きを高めておくことは,その後の運動療法や日常生活動作において非常に意義のあることであり,肝心な点は徒手的な治療だけでなく,それを種々の治療手段と組み合わせて用いることで有効なものとなるということである。
国際整形徒手理学療法士連盟(International Federation of Orthopaedic Manipulative Physical Therapists)は徒手理学療法を「徒手的な技術と治療的な運動を含む高度に特異的な治療アプローチを用いた,臨床推論に基づく,神経筋骨格系の状態をマネジメントするための理学療法の専門領域」と定義している。また先述のように膝OA患者の治療においては,関節モビライゼーションのような徒手的なアプローチだけでなく,種々の運動療法や患者指導などを含めた包括的なアプローチが必要である。よって今回は膝OAに対する徒手理学療法について,関節モビライゼーションから運動療法,患者指導までを含めて包括的に情報を提供する。