理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1-P-F-2-2
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ポスター演題
高位脛骨骨切術(OWHTO)後3ヶ月時点で骨癒合が不良であった一症例
~腓骨神経麻痺後遺症からの考察~
近藤 晃弘増岡 祐依舩戸 未央安井 淳一郎
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抄録

【はじめに】 内側型膝変形性関節症に対する治療方法として,高位脛骨骨切術が行われることは少なくない.その手術方法としてOpen Wedge HTO(OWHTO)とClose Wedge HTOがある.Open Wedge HTOの術後リハビリテーションにおいて,骨癒合が不十分となりリハビリテーションが円滑に進まないことや抜釘術を予定通り実施できないことなどをしばしば経験する.今回,腓骨神経麻痺後遺症のある症例でOWHTOを施行し、術後3ヶ月時点で骨癒合が不十分であった症例に対し,足部・足関節機能低下に着目しアプローチしたところ良好な成績を得たので報告する.

【症例紹介】 年齢54歳,女性,身長161.4cm,体重56.5kg,BMI21.69kg/m2,職業は小学校教論であり,スポーツは硬式テニスを4回/週程度で行っている.

現病歴はX年-6年より左膝痛が出現し,近隣整形外科にて注射と理学療法を実施していた.スポーツ活動を休止するものの症状の変化はなかった.X年-3ヶ月,手術目的で当院受診し手術予定となる.

既往歴はX年-10年に要因なく腓骨神経麻痺出現し,理学療法を実施することなく自然経過により下垂足が改善した.その後,大きな症状はなかった.

X年+0ヶ月,Open Wedge HTO施行(9°外反矯正),術後3週で全荷重し退院した.

X 年+3ヶ月,歩行時痛(Mid stance)が持続し,診察にて骨癒合不十分とであり偽関節傾向と診断された.

【評価とリーズニング(X年+3ヶ月)】 X年+3ヶ月,骨切り部に腫脹が軽度残存し,叩打痛があった.ROMは膝関節患側+2/150°健側+4/160°であった.下肢筋力は徒手筋力計Micro FETⅡ(日本メディックス社製)を用いて測定した:()内は患健比.膝関節屈曲119.4/101.4N(117.7%),伸展141.0/145.0N(97.2%),足関節背屈168.9/273.7N(61.7%),底屈(膝伸展位)94.4/121.8N(77.5%),底屈(膝屈曲位)112.3/123.2N(91.2%),内返し91.3/121.3N(75.3%),外返し108.4/126.2N(85.9%)であった.腓骨神経領域の感覚障害はなかった.足関節不安定性は,前方引き出し++/+,内反++/+,外反+/-,ショパール関節-/-,第5中足骨立方骨++/+であった.

歩行はInitial Contact(IC)からLoading Response(LR)にかけて急激に移行し,足部外転・内側縦アーチの降下が生じ,Mid Stance(MS)でKnee-inに伴う下腿外旋が生じ,LRからMSにかけて骨切り部に疼痛を有していた.

 主観的臨床スコアの評価にはKnee injury and Osteoarthritis Outcome Score(KOOS)を用い評価し,symptoms64.3点,pain77.8点,ADL82.3点,Sports45.0点,QOL50.0点,合計63.9点であった.

 腓骨神経麻痺後の足部・足関節機能低下(特に前脛骨筋,腓骨筋・後脛骨筋によるアーチ保持機構の破綻)によりLRからMSにかけて急激な内側縦アーチの降下に伴う足部に対する下腿遠位の内旋と,Knee-inによる下腿近位部の外旋が生じることにより,骨切り部へのせん断ストレス・離開ストレスが生じることにより疼痛が生じ,骨癒合の遅延につながったと推察した.

【介入内容と結果(X年+4ヶ月)】介入内容は,足関節背屈抵抗運動,自重での足内返し運動,足外返し抵抗,カーフレイズ,タオルギャザーをホームエクササイズとして各10回5セットを指導し,補助具としてインソールを作成した.

結果は,足関節背屈は介入前168.9→介入後274.0N(162.2%の改善),底屈(膝伸展位)94.4→229.7N(243.3%),底屈(膝屈曲位)112.3→245.2N(218.3%),内返し91.3→125.9N(137.9%),外返し108.4→163.3N(150.6%)と増加した.

歩行は急激なLRからMSへの移行と内側縦アーチの降下は消失し,極端なKnee-inに伴う下腿外旋は軽減し,疼痛も消失した.

KOOSは,symptoms64.3→75.5点,pain77.8→77.8点,ADL82.3→89.7点,Sports45.0→60.0点,QOL50.0→68.8点,合計63.9→74.2点に増加した.骨癒合も1ヶ月間で僅かながら進行した.

【結論】 Open Wedge HTO後の骨癒合が不良であった症例に対し,既往歴である腓骨神経麻痺後の後遺症に着目しアプローチを行った.上行性運動連鎖によるせん断ストレス・離開ストレスが骨切り部の骨癒合を遅延させる一因子であることが推察された.

【倫理的配慮,説明と同意】 本内容はヘルシンキ宣言に基づき、対象者に書面にて十分な説明をしたのち同意を得た.

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© 2019 日本理学療法士協会
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