理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1-P-D-3-6
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ポスター演題
変形性股関節症に対する入谷式足底板の効果について
~足底版作成前後の歩行時痛軽減効果~
斉藤 嵩荒川 達也小野 誠
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抄録

【はじめに,目的】変形性股関節症(以下,Hip-OA)は関節炎や骨変形を主体とし,関節可動域制限と強い疼痛を認める事がある.これらは日常生活動作に制限をきたし,特に歩行時痛は大きな問題となる.歩行時痛の軽減には股関節へのメカニカルストレスを改善させる必要がある.今回,入谷式足底板(以下,足底板)を用いて,下肢にかかるメカニカルストレスを改善させ,Hip-OAの歩行時痛が軽減できたためここに報告する.

【方法】対象は当院に来院した,股関節屈曲角度90度未満のHip-OA患者12名,計15肢とした.(全例女性,平均年齢61.9±6.56歳).股関節の平均屈曲角度は65.3±14.64°であった.病期は日本整形外科学会の病期分類にて進行期10肢,末期5肢であった.方法は,歩行時痛はNumerical Rating Scale(以下,NRS)を用い,0~10の11段階にて足底板作成前後の歩行時痛を評価した.次に足底板の評価の特徴を検討した.評価は,距骨下関節(回外・回内誘導),第1列(底屈/回内・背屈/回外誘導)の肢位と内側楔状骨(拳上・なし)をテーピングにて,横アーチ部(中足骨前方部・後方部・楔状骨部)の高さはパッドにて評価した.また,評価の判断には歩行時痛の増減と歩容にて判定をした.統計学的処理はSPSS23.0,IBM社製を用い,疼痛の変化をwilcoxon signed-rank 検定にて検討した.有意水準は1%未満とした.

【結果】歩行時痛はNRSにて作成前では6.0±1.17であった.作成後では1.7±1.38であり,全例にて作成の前後で疼痛が軽減し有意差がみられた(p<0.01).足底板の特徴は全例で距骨下関節回外誘導,第1列底屈/回内誘導であった.内側楔状骨は14肢中7肢が拳上であった.横アーチ部は中足骨前方部分で0.2±0.23㎜,中足骨後方部分で0.26±0.24㎜,楔状骨部分で0.28±0.28㎜高さを上げた.

【結論】Hip-OAに対して,足底板を処方し,全例で歩行時痛が軽減した.歩行時痛軽減に至った足底板の特徴は全例にて距骨下関節回外誘導,第1列底屈/回内誘導であった.距骨下関節回外誘導は運動連鎖にて股関節を内旋にさせ,大腿骨頭と寛骨臼の被覆率を高め,股関節が安定する.また,距骨下関節回外誘導は足部を硬くし,第1列底屈/回内誘導は立脚期中期以降に下腿の前方移動を促す.この2点は,足関節底屈モーメントを高め立脚期後半の股関節伸展の代償として働く.これらの効果が歩行時痛の軽減に繋がったと考えられる.他項目は個人により差異があり,個々に合わせて処方が必要となる.足底板は進行期以上のHip-OAに対し,メカニカルストレスを改善させ,歩行時痛を軽減させるのに有用である.

【倫理的配慮,説明と同意】ヘルシンキ宣言の一般原則にに基づいて,意義・方法・不利益などを書面と口頭で説明を行い同意を得た上で行った.

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© 2019 日本理学療法士協会
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