理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1-O-10-5
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一般演題
慢性腰痛における身体知覚異常と2点識別覚閾値の影響
-成人脳性麻痺と慢性腰痛で違いはあるか-
山下 浩史田中 克宜壬生 彰西上 智彦
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抄録

【はじめに、目的】

慢性腰痛には末梢のみならず中枢神経系の変化など様々な要因が関与している。慢性腰痛に関与する要因として、身体知覚異常や2点識別覚閾値(Two Point Discrimination Threshold: TPD)の増加が挙げられており、また、それらを標的とした理学療法の有効性が報告されている。しかし、これらの要因は疼痛に関連しているものなのか、あるいは、姿勢の異常や筋緊張の増加に影響されるものなのか明らかではない。本研究では、健常対象者、慢性腰痛者、成人脳性麻痺(CP)で腰痛者、CPで腰痛がない者の間に、身体知覚異常及びTPDに違いがあるかを検討し、どのような要因が身体知覚異常及びTPDに影響するか明らかにすることを目的とした。

【方法】

対象は20歳以上とし、腰痛のない者10名(男性4名、女性6名、平均年齢39.5±7.9歳)をHC群、腰痛が6ヶ月以上持続する慢性腰痛者11名(男性6名、女性5名、平均年齢42.0±20.5歳)をPain群、腰痛が6ヶ月以上持続する成人CP者15名(男性7名、女性8名、平均年齢40.1±14.6歳)をCP_Pain群、腰痛がない成人CP者13名(男性5名、女性8名、平均年齢41.8±17.3歳)をCP_noPain群とした。除外基準は6ヶ月以内に外科手術及びボツリヌス療法を行った者、質問紙の理解及びTPDの評価が困難である者とした。評価項目は、粗大運動能力分類システム(Gross Motor Function Classification System: GMFCS)、疼痛強度(Numeric Rating Scale: NRS)、身体知覚異常(Fremantle Back Awareness Questionnaire:FreBAQ)、頬部及び腰部TPD、及び座位姿勢の能力(Posture and Postural Ability Scale: PPAS)とした。統計学的解析は、各評価項目における群間比較をKruskal-Wallis検定を用いて行い、統計学的有意水準は5%とした。

【結果】

頬部TPDは各群間に有意差を認めなかった。腰部TPDはCP_Pain群及びPain群がHC群より有意な増加を認めた。FreBAQはCP_Pain群及びPain群がHC群及びCP_noPain群より有意に増加していた。PPASは、前額面と矢状面の双方において、CP_Pain群及びCP_noPain群よりPain群が有意に低い数値であり、CP_Pain群とCP_noPain群には有意な差は認めなかった。

【結論】

本研究において、腰部TPDやFreBAQはCPであろうとなかろうと、疼痛があると有意に増加することや姿勢の変化は疼痛に影響しないことが明らかになった。特に、姿勢の異常や筋緊張の増加があるにもかかわらず疼痛がないCPにおいて、身体知覚異常の指標であるFreBAQが慢性腰痛者やCPで腰痛者よりも有意に低いことは、身体知覚異常には疼痛が深く関与していることを示し、FreBAQを評価し、その結果に応じて、理学療法を選択していく必要がある。

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究は甲南女子大学倫理委員会の承認を得て実施した。事前に研究目的と方法を十分に説明し、同意が得られた者のみを対象とした。

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© 2019 日本理学療法士協会
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