理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 2-O-18-2
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一般演題
関節拘縮後の関節軟骨に対する寒冷浴の効果
中川 拓哉小島 聖二谷 彩森 啓至
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キーワード: 関節軟骨, 拘縮, 寒冷浴
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抄録

【はじめに、目的】

長期間の関節の不動化により生じる関節拘縮では、関節軟骨が菲薄化することが知られている。一方、関節拘縮の治療として寒冷浴を実施すると、関節軟骨を器質的に改善する可能性が報告されているものの、その詳細については十分に検討されていない。

本研究では関節の不動化によるラット関節拘縮モデルに対して寒冷浴を実施し、その効果について病理組織学的手法を用いて検討した。

【方法】

8週齢のWistar系雄ラット36匹を対象とした。無作為に実験群(n=30)と対照群(n=6)に分け、実験群は4週間のギプス固定により関節拘縮を作製した。ギプス固定の方法は先行研究に準じて麻酔下で右膝関節を最大屈曲位で固定し、適切な固定を維持した。なお、骨の成長を考慮して膝と足関節周囲は露出させた。固定期間終了後、無作為に寒冷浴実施群(n=12)、寒冷浴非実施群(n=12)、固定期間終了直後に膝関節を採取する拘縮群(n=6)に分けた。寒冷浴実施群は2週間と4週間の介入に分け(各n=6)、各々の期間に寒冷浴を実施した。寒冷浴は麻酔下で約4℃の冷水に膝関節全体を30分間(週7回)浸け、寒冷浴中は下肢の凍傷の予防に努めた。寒冷浴非実施群と対照群は、寒冷浴実施群の比較対照となるよう、それぞれの飼育期間終了まで通常飼育した。飼育期間終了後、右膝関節を採取し、常法にて組織固定、脱灰、パラフィン包埋を行った後、厚さ約3μmで薄切した。HE染色を行い膝関節を鏡検した。関節軟骨の菲薄化の程度は、各群の関節軟骨厚を測定し、群間比較を行った。

【結果】

関節軟骨の組織学的所見としては、拘縮群と寒冷浴非実施群に関節軟骨表面の不整と線維増生、表層と中間層の軟骨細胞の増生、タイドマークの二重化が認められた。寒冷浴実施群では軟骨細胞の増生とタイドマークの二重化は認められるが、その程度は軽微であった。関節軟骨厚については、寒冷浴非実施群と比べ、寒冷浴実施群で関節軟骨厚は改善傾向を示した。

【結論(考察も含む)】

寒冷浴を行うと関節軟骨厚の改善と関節軟骨表層の変性を抑制する傾向が認められた。

 先行研究においては、関節軟骨の温度の低下によって、損傷後の軟骨細胞の生存率が高いとの報告がある(Onurら:2014)。本研究においても、寒冷浴によって関節内の温度が低下し軟骨細胞が保たれた可能性がある。また、軟骨細胞は基質の産生、維持を司っており(久保ら:2001)、寒冷刺激の生理学的効果である二次的血管拡張作用によって保たれた軟骨細胞の代謝が活性することで基質の産生が増大し、関節軟骨厚の改善と関節軟骨表層の変性を抑制できたものと推察される。

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究は所属機関の動物実験委員会の承認を得て行った(承認番号 第0010号)。

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© 2019 日本理学療法士協会
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