理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 2-O-22-2
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一般演題
産後の女性における腰痛と脊柱アライメントとの関連
井口 咲希井上 倫恵伊藤 有沙松本 大輔梶原 由布杉浦 英志
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抄録

【はじめに、目的】産後のマイナートラブルのうち、腰痛の発症率は高く、長期間に渡り残存する例も多く報告されている。産後の腰痛は疼痛部位により、腰背部痛と仙腸関節・臀部・鼠径部・恥骨結合・大腿前面の痺れや鈍痛をもたらす骨盤帯痛とに大別され、日常生活活動や生活の質の低下に影響することから、関連する要因の検討が必要である。産後の腰背部痛に影響する因子として、body mass index(BMI)や、妊娠前と比較した体重増加量、また、骨盤帯痛に影響する因子として、BMIや出産様式などが報告されている一方で、身体的特徴と腰痛との関連を検討した報告は少ない。産後の女性は未経産婦と比較し、胸腰椎弯曲角が有意に小さいと報告されている一方、腰痛との関連は明らかになっていない。そこで、産後における矢状面の脊柱アライメントと腰痛との関連について、疼痛部位に着目して検討することを目的とした。

【方法】対象は20~38歳の産後1年以内の女性37名とする。対象者特性として、年齢、身長、体重、BMI、妊娠前と比較した体重増加量、出産後経過月数、骨盤ベルト使用の有無、出産回数及び出産様式を質問紙にて調査した。また、Spinal Mouse®にて静止立位時の胸椎後弯角、腰椎前弯角、仙骨傾斜角を測定した。腰痛強度は visual analogue scaleを用い、腰痛による日常生活への影響度は Oswestry disability index 日本語版で評価した。腰背部痛、骨盤帯痛の有無、及び、腰背部痛のみを有する群と骨盤帯痛を有する群との各2群において、上記パラメータの比較検討を行った。

【結果】対象者の平均出産後経過月数は7.5か月であり、疼痛発症部位は腰背部46%、骨盤帯部51%であった。脊柱アライメントについて、胸椎後弯角、腰椎前弯角、仙骨傾斜角のいずれにおいても、腰背部痛、骨盤帯痛の有無による比較において有意な差は認められなかった一方で、腰背部痛のみを有する群(-17.0±21.5度)は、骨盤帯痛のある群(-21.2±18.3度)と比較し、腰椎前弯角が小さい傾向を認めた(p=0.08)。また、BMI、妊娠前と比較した体重増加量、出産様式のいずれにおいても、腰背部痛、骨盤帯痛の有無による比較において有意な差は認められなかった。

【結論】産後の女性において腰痛と脊柱アライメントとの関連を調査したところ、腰背部痛のみを有する者において、腰椎前弯角が小さい傾向を認めたことから、腰背部痛には骨盤帯痛と比較し、脊柱アライメントが関連している可能性が示唆された。また、腰背部痛や骨盤帯痛とBMI、妊娠前と比較した体重増加量、出産様式との関連は認められず、先行研究と異なる傾向を示した。このことには、本研究の対象者においてBMI≧25の者(n=1)や帝王切開の者(n=2)が極端に少なかったことが影響しているものと推察された。

【倫理的配慮,説明と同意】本研究は本学の生命倫理審査委員会にて承認を得た上で、対象者に文書にて意義、方法を説明し同意を得て実施した(承認番号:17-507)。

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© 2019 日本理学療法士協会
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