理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 2-O-22-5
会議情報

一般演題
女性の骨盤形態の特徴と出産経験による比較
笠野 由布子増田 一太
著者情報
キーワード: 骨盤形態, 女性, 出産
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに、目的】

 妊産婦の多くが経験する腰痛・骨盤痛の要因として、体形、姿勢の変化が挙げられ、発生する部位等により要因が各々異なると考えられる。特に胎児の成長や分娩に伴う骨盤形態の変化は骨盤痛を引き起こすと考えられるが、妊産婦の骨盤形態の特徴や腰痛・骨盤痛部位との関係などは明らかにされていない。今回我々は、一般女性の骨盤形態計測と妊娠出産に関するアンケート調査を実施し、その結果から女性の骨盤形態の特徴について報告する。

【方法】

対象は、地域の健康関連イベント等に参加する一般女性を対象とし、骨盤形態計測とアンケート調査を実施した。アンケート調査の内容は、年齢、現在の腰殿部痛有無、尿失禁有無、妊娠・出産の回数や出生児体重、妊娠出産当時の腰痛有無などとした。骨盤形態の計測は、マルチン型骨盤計測器用いて行い、日本産婦人科学会の定める骨盤外計測法に基づき、棘間径A、棘間径P、第1外斜径、第2外斜径と身長、体重を計測した。恥骨部、仙腸関節部の圧痛所の有無を聴取した。また、計測結果から「骨盤の開き度」と「骨盤のゆがみ度」を算出した。解析は、各調査・計測項目間の相関関係をPearsonの相関係数を用いて検討した。さらに、出産経験の有無、出産回数、腰痛・殿部痛の有無、尿失禁の有無、圧痛所見の有無と骨盤計測値について一元配置分散分析および対応のないt検定を用いて比較検討した。

【結果】

 アンケートおよび骨盤計測を実施した対象者は、294名(平均年齢43.8±17.0歳)であった。棘間径Aは、年齢、出産回数、BMI、第1、2外斜径と正の相関関係を認めた。棘間径Pは、第1、2外斜径と正の相関、骨盤の開き度と負の相関関係を認めた。出産回数は年齢と正の相関関係を認めた。出産経験の有無による比較では、未産婦と比べて出産経験のある人は有意にBMIが高く、棘間径A、第1、第2外斜径、骨盤の開き度が大きかった。現在腰痛を自覚している人は、無い人と比べて有意にBMIが高く、骨盤の開き度が大きかった。

【結論(考察も含む)】

出産経験のある人、出産回数が多い人ほど骨盤前方の開きが大きくなると考えられた。しかし、骨盤の開き度は棘間径Pの影響を受けており、出産経験と骨盤の開き度に関係を認めなかったことから、出産やその回数は単純に骨盤の前方を広げるわけではないと考えられた。また、今回の対象者は出産経験のある人の平均年齢が高く、棘間径Aは年齢の影響を受けていることから、棘間径Aは加齢的影響受けていると考えられた。以上のことから、今後妊娠出産に伴う骨盤形態への影響と加齢的影響を区別して検討するには、40歳代以降の未産婦と10-20歳代の若年妊産婦の対象者を増やして検討する必要があると考えられた。

【倫理的配慮,説明と同意】

実施にあたっては、中部学院大学倫理審査委員会の承認(受付番号:D17-0005)を得て行った。対象者には人権およびプライバシーの保護、研究目的や方法、危険性について十分に説明を行い、書面による同意を得たうえで行った。

著者関連情報
© 2019 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top