主催: 日本理学療法士協会
会議名: 第53回日本理学療法学術大会 抄録集
開催日: 2018/07/16 - 2018/12/23
【はじめに、目的】
成人脊柱変形は脊柱伸展可動域の減少,体幹伸筋群の筋力低下,腰痛の出現頻度が高く,加齢とともに増悪する傾向がありQOLを阻害するとされている.Bansalらのシステマティックレビューでは,運動療法の姿勢改善効果を報告しており運動療法は有用であると考えられるが,QOLに対する効果は明らかではない.このことから,慢性腰痛を呈する成人脊柱変形に対する疼痛軽減と姿勢改善を目的とした運動療法の効果を解明し,QOL改善に影響する因子を検討することを目的とした.
【方法】
対象は当院整形外科・脊椎外科を受診した腰痛を呈する成人脊柱変形の女性高齢者26名とした.なお,脊柱の手術既往,重度の神経根症状,脊髄症状,その他重篤な合併症がある者は対象から除外した.評価項目は,動作時腰痛(VAS),脊柱傾斜角,脊柱伸展可動域,体幹伸展筋力,歩行速度(10m歩行テスト),腰痛特異的QOL(ODI)とした.体幹伸展筋力は,徒手筋力測定器(モービィMT-100[酒井医療社製];HHD)を用いて椅坐位にて測定した.評価時期は介入前と介入後3ヵ月とし,全例に疼痛に対するストレッチ・温熱療法,体幹伸展可動域改善,体幹筋力強化,姿勢改善を目的とした運動療法を実施した.統計的解析は,介入前後の比較にWilcoxsonの符号付順位和検定を用いた. QOL改善に影響する因子の検討にステップワイズ多重ロジスティック回帰分析を用いた.有意水準は全て5%とした.
【結果】
介入前後の比較では動作時腰痛,脊柱傾斜角,脊柱伸展可動域,歩行速度,ODIは有意な改善を認めた(p<0.05).多重ロジスティック回帰分析の結果,ODI改善に影響する因子は介入前の脊柱傾斜角(オッズ比;3.92)と歩行速度の改善(オッズ比;15.3)であった.
【結論】
慢性腰痛を呈する成人脊柱変形に対する運動療法介入では疼痛軽減と脊柱矢状面アライメント改善,歩行速度改善,ODI改善の効果が得られた.運動療法としては疼痛軽減と姿勢改善を目的とした介入が重要であり,歩行速度を改善させることが運動療法のポイントの一つである可能性が示された.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に則り行った.対象者には,本研究の主旨と方法に関して十分な説明を行い,承諾を得た後,測定を行った.なお,本研究は演者所属機関の倫理委員会の承認を得て実施した.