理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 2-P-E-1-1
会議情報

ポスター演題
脊柱矢状面アライメントの経年変化に関連する身体機能因子の検討
-34年経過例の縦断調査-
千葉 恒清水 睦也松倉 圭佑小林 徹也杉澤 裕之
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに、目的】近年、中高齢者の脊柱矢状面アライメントの経年変化に関する報告は散見されるが、30年以上の経過を調査した報告は見受けられない。本研究の目的は、34年経過例の縦断調査から、脊柱矢状面アライメントの経年変化に関連する身体機能因子を明らかにすることである。

【方法】対象は、1983年(baseline;BL)と2017年(follow-up;FU)の住民検診で立位全脊柱X線側面像を撮影し、FU時に身体機能項目の評価が可能であった34名(男性21名、女性13名、平均年齢BL43.3±4.7歳、FU77.4±4.7歳、平均観察期間34.1±0.6年)とした。身体機能の評価項目は、肥満度、膝関節可動域、脊柱自動背屈域テスト(Back Extension Test(BET);腹臥位から下肢・骨盤固定で上肢を使用せずに体幹を最大背屈させた時の下顎床間距離)、脊柱他動背屈域テスト(Prone Press up Test;腹臥位から下肢・骨盤固定で上肢を使用して体幹を最大背屈させた時の床から胸骨頚切痕までの距離)、等尺性筋力計を用いた腹筋・背筋・大殿筋・大腿四頭筋力(Quad)、Functional Reach Test(FRT)、腰痛Visual Analogue Scale(VAS)、Roland-Morris Disability Questionnaire(RDQ)、日整会腰痛スコア(JOA)とした。方法は、BLおよびFUのX線側面像から脊柱矢状面アライメントの指標であるsagittal vertical axis(SVA)を計測し、その変化値と各評価項目との関係について統計的解析を行い、SVAに影響する因子を検討した。統計的解析は、SVAの変化値と各評価項目との関連をSpearmanの順位相関係数にて分析し、さらにSVAの変化値を従属変数、相関分析にて有意とみなされた項目を独立変数とするステップワイズ法による重回帰分析にて関連要因を抽出した。いずれも有意水準は5%とした。

【結果】SVAの変化値は、BET(r=0.49、p<0.01)、腹筋(r=0.44、p<0.05)、Quad(r=0.39、p<0.05)、FRT(r=0.62、p<0.01)、腰痛VAS(r=-0.59、p<0.01)、RDQ(r=-0.70、p<0.01)およびJOA(r=0.64、p<0.01)と中等度の相関を認めた。重回帰分析では、SVAの関連因子としてRDQ(標準化係数-0.65、p<0.01)および腰痛VAS(標準化係数-0.35、p<0.01)が抽出された。

【結論(考察も含む)】脊柱矢状面アライメントは経年的に変化し、特にSVA前方偏位は、脊柱自動可動域や体幹・下肢筋力の低下、立位バランス能力の低下と関連が強く、腰痛症状も認められ、QOLも低下していた。長期間に渡り脊柱矢状面アライメントを良好に保つことは、腰痛予防そしてQOL向上に寄与する可能性が示唆された。

【倫理的配慮,説明と同意】対象者にはヘルシンキ宣言に則り十分な配慮を行い、研究の趣旨および目的、研究への参加の任意性と同意撤回の自由およびプライバシーの保護について、口頭と書面にて十分な説明を行い、同意を得た。

著者関連情報
© 2019 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top