理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1-O-2-5
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一般演題
振動刺激を併用した骨盤底筋群への4週間の運動介入が尿失禁症状と生活の質に与える効果
小宮 諒浦辺 幸夫笹代 純平前田 慶明
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抄録

【はじめに】

尿失禁罹患者では、日常生活や仕事に支障をきたすことが多く、生活の質(QOL)が低下する。尿失禁の治療には、骨盤底筋群への運動介入が筋活動の賦活や筋力増強の観点から有用とされるが、対象が視覚的に筋収縮を確認することが難しいなどの問題もある。筆者らは、振動刺激を併用した骨盤底筋群の運動方法を考案し、介入直後に約28%筋活動が増加することを報告した(小宮ら、2017)。しかし、この運動の長期的な介入効果は不明であった。本研究の目的は、振動刺激を併用した運動介入を4週間行い、尿失禁症状とQOLの変化を捉え、振動刺激を併用した骨盤底筋群の運動効果を確認することとした。仮説は、振動刺激を併用した群では、併用しない群と比較して4週後の時点で尿失禁症状の改善効果が大きいとした。

【方法】

対象は、尿失禁の自覚症状を認める20~60代の女性120名とした。振動刺激を併用した運動介入群(以下、振動あり群)60名(41.0±10.6歳)と併用しない運動介入群(以下、振動なし群)60名(41.9±10.5歳)に、4週間の運動介入を実施した。運動姿勢は膝関節屈曲90°、股関節屈曲90°の座位姿勢とした。振動あり群は、10秒の振動と30秒の休息を繰り返す振動クッション(株式会社ドリーム)上で、振動時に骨盤底筋群の収縮を行った。振動なし群では、同じ運動課題で、振動刺激を加えずに実施した。どちらの群も1回の運動を5分間とし、1日3回行うよう指示した。対象は、尿失禁症状とQOL評価に関する4つの質問(21点満点で点数が低いほど自覚症状は軽い)からなるInternational Consultation on Incontinence Questionnaire Short-Form(ICIQ-SF)への回答を運動介入前、2週後と4週後の計3回行った。ICIQ-SFの総得点について、各群の得点推移の比較にフリードマン検定を、各時期の得点の群間比較にマンホイットニーU検定を用いた。すべて有意水準を5%とした。

【結果】

4週後の時点で、全ての回答が得られた対象は各群50名ずつであった。介入前、2週後と4週後のICIQ-SFの総得点(点)は、振動あり群でそれぞれ11.9±1.9、9.1±2.6、6.5±3.7であり、すべての時期で有意な差を認めた(p<0.05)。振動なし群ではそれぞれ12.0±2.0、9.5±3.3、8.3±2.9であり、介入前と2週後、介入前と4週後で有意な差を認めた(p<0.05)。また、4週後で振動あり群となし群のICIQ-SFの総得点に有意な差を認めた(p<0.05)。

【考察】

4週後の時点で、群間のICIQ-SFの得点に違いを認める興味深い結果であった。筆者らは振動刺激を併用した運動後に即時的な筋活動の増加を確認しており、断続振動には振動箇所に注意を向けさせる効果があるとされる(安木ら、2002)。これらの要因が振動なし群と比較して総得点が低くなった要因の一部ではないかと考える。今後は、実際の筋活動や活動量の変化の調査を行い、臨床現場やホームエクササイズで有用となるか情報を提供していきたい。

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究は、ヘルシンキ宣言に基づき研究の目的および研究方法を十分に説明した後、書面にて同意を得られた者を対象とした。

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© 2019 日本理学療法士協会
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