理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 2-P-B-3-6
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ポスター演題
下部胸郭矯正を目的とした体幹スーツの効果
東 裕一柿崎 藤泰池田 翔吉川 将斗鷹田 翔悟
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抄録

【はじめに】

 体幹筋の不均衡が胸郭を変形させると諸家が報告しているが、運動させる際に偏位した肋骨を生理的な位置に戻すことによりスムーズな運動が得られ筋力が発揮されやすいことを経験する。これを持続させる方法の1つとして低圧力スーツの利用が考えられる。しかし、着用後の呼吸、身体機能の変化についての報告は少ない。

 本研究の目的は、下部胸郭の矯正を意図としたデザインの低圧力体幹スーツの着用が身体運動と呼吸機能に及ぼす影響を確認することである。

【方法】

 対象は当院男性10名、平均年齢26.1±3.4歳(22-32)であった。腰痛の経験者とし呼吸器疾患が無く、下肢に症状がない者とした。

 体幹スーツは、CORE-fit(インターリハ社製)を使用し、装着前後で以下のものを比較した。体幹可動性として立位前・後屈角度、座位体幹回旋角度、呼吸機能として予備吸気量、予備呼気量、吸気筋力、呼気筋力、運動への影響として歩行中の踵接地時床反力鉛直成分を計測した。デジタルカメラにて静止可能な立位最大前後屈位、座位最大回旋位を撮影し、立位最大前後屈角度、座位体幹回旋角度を算出した。予備吸気量と予備呼気量の測定にはAutospiroAS-407(MINATO社製)を利用した。吸気筋力と呼気筋力の測定にはRPM (micromedical社製)を使用した。床反力鉛直成分の測定にはWinFDM-S(zebris社製)を使用した。

 装着前後の比較を行い、効果量も算出した。体幹回旋角度と床反力鉛直成分の関連性を検討した。

【結果】

 装着前後の予備吸気量は1.1±0.5Lから1.9±0.5Lと増加し、予備呼気量は1.7±0.3Lから1.6±0.3Lと減少したが有意差は認められなかった。予備呼気量の効果量は中(r=0.34)であった。呼気筋力が121.4±20.6cmH2Oから128.5±22.2 cmH2Oへと有意に増加し(p=0.027)、吸気筋力は132.0±40.0cmH2Oから135.9±41.0 cmH2Oと増加し、有意差は認められなかった。吸気筋力の効果量は中(r=0.31)であった。

 座位での左回旋は44.0±8.7°から47.9±8.8°へと有意に増加し(p=0.012)、右回旋は43.6±11.7°から47.8±10.4°と増加したが有意差は認められず、効果量は大(r=0.53)であった。立位前屈は105.4±14.8°から107.6±13.6°と増加し、立位後屈は44.8±14.6から47.6±12.3と増加した。ともに有意差は認められず、立位後屈の効果量は中(r=0.43)であった。

 歩行の左踵接地の鉛直成分は体重比110.7±9.7%から112.8±12.5%と増加し、効果量中(r=0.36)であった。右は111.9±4.8%から114.1±9.3%と増加したが効果量r=0.2であった。体幹回旋角度と踵接地鉛直成分の間には相関が認められなかった。

【考察】

  低圧力体幹スーツの1つであるCORE-fitの装着により予備吸気量が増加し、呼気筋力が増加した。体幹回旋、後屈角度が向上する傾向にあり、体幹の柔軟性が向上するだけではなく、踵接地の床反力が増加したことより体幹固定の作用も改善する可能性が示唆された。腹筋群を促通していると考えられる。

【倫理的配慮,説明と同意】

 被験者には本研究について説明し、参加の同意を得た。

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