理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1-M-2-8
会議情報

ミニオーラル
腰部脊柱管狭窄症患者の下肢痛の強さは,歩行時における脊椎,骨盤,股関節の動的alignmentと関連する.
三浦 拓也佐藤 圭汰小俣 純一遠藤 達矢岩渕 真澄白土 修伊藤 俊一
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに、目的】

腰部脊柱管狭窄症(LSCS)患者において下肢の痛みや間欠性跛行は主たる所見であり,脊椎や骨盤,股関節のalignmentがその増減に関連することが予想される.しかし,臨床においては静的評価からのみ関連性を検討することが多く,実際に下肢痛を生じる機会が多い歩行時などの動的環境下での脊椎,骨盤,股関節の動的alignmentと下肢痛の関連性については明らかとなっていない.本研究の目的はLSCS患者の歩行時における脊椎,骨盤,股関節の動的alignmentと下肢痛の関連性を調査することである.

【方法】

対象はLSCS患者20名とした.動的alignmentの計測には,三次元動作解析装置VICON MX(Vicon Motion System,Oxford,UK;200 Hz)と床反力計2基(AMTI,USA;1000 Hz)を使用した.動作課題は自然歩行とし,痛みの強い方の下肢を床反力計上に接地させ,3回分の施行を採用した.解析区間は1歩行周期とし,全例100%に正規化した.解析に先立って事前に取得した下肢痛VASの平均値を算出し,その平均値をもとにHigh VAS群,Low VAS群の2群に群分けを行った.解析に使用する項目は歩行時の脊椎,骨盤,股関節の矢状面,前額面における角度とした.統計解析にはunpaired t-testを用い,1歩行周期すべての時点において2群間での比較を行った.有意水準は5%とした.

【結果】

High VAS群(12名),Low VAS群(8名)における下肢痛の平均値はそれぞれ81.7±8.3,44.4±13.5であり,2群間に有意差が認められた.歩行時の脊椎角度に関して,矢状面においては全ての区間でHigh VAS群がLow VAS群に比して有意に脊椎伸展位であった.前額面においてはICから立脚中期間(0-28%),遊脚後期からIC間(84-100%)においてHigh VAS群が有意に患側に側屈していた.骨盤角度に関して,矢状面においては全ての区間でHigh VAS群がLow VAS群に比して有意に骨盤前傾位であったが,前額面上においては有意差は認められなかった.股関節に関しては全ての比較において2群間に有意差は認められなかった.

【結論(考察も含む)】

本研究結果から,下肢痛の強い者ほど歩行時に脊椎はより伸展位であり,かつ骨盤は前傾していることが示された.これは,下肢痛が強い者は歩行周期を通して,そもそも下肢の痛みを誘発しやすい姿勢で歩行していることを示している.さらに,患側下肢方向への大きい脊椎の側屈は,遊脚後期から立脚中期までの間で認められた.これは,荷重負荷が加わるフェーズに向かう準備の段階から不適切なalignmentで歩行していることを示す所見であり,動的評価により明らかとなった歩行時に介入すべきポイントである.下肢痛の強いLSCS患者は,それを緩和させるような姿勢での歩行ができず,動的alignmentが不良なままでの歩行になっている可能性が示唆された.

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究の被験者には事前に書面と口頭により研究の目的,実験内容,考えられる危険性等を説明し,理解と同意を得られた者のみ同意書に署名し,実験に参加した.本研究は所属機関の倫理委員会の承認を得て行った(一般:承認番号29263).

著者関連情報
© 2019 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top