理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1-P-C-1-6
会議情報

ポスター演題
膝前十字靭帯損傷の発生に着目したカッティング動作中における膝関節運動学・運動力学的解析
-主成分分析を用いた波形の特徴-
柳原 稔梶田 山護小松 晃廣津 志穂木藤 伸宏
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに、目的】

膝前十字靭帯(以下,ACL)損傷は,膝関節のスポーツ外傷の中で頻度の高い外傷である.ACL損傷は非接触型損傷が多く,女性に頻発する.先行研究では,ACL損傷の発生に外部膝関節外反モーメントと膝関節外反角度の大きさが関連することが報告されている.その一方で,先行研究の多くはパラメーターのピーク値の比較を行っている.しかし,被験者間の波形のパターンには多くのばらつきがあり,すべての被験者で同様なパラメーターを定義することが困難である可能性がある.そのため本研究は,側方カッティング動作中の解析時間全体における健常男女間の膝関節内外反角度と内外反モーメント波形の特徴を抽出し,比較することを目的とした.

【方法】

被験者は男性20名,女性20名の2群を対象とした.課題動作は,側方へのカッティング動作とした.動作中の運動学・運動力学的データは,3次元動作解析装置Vicon MXと床反力計10基を用いて取得した.解析時間は,足部が床反力計に接触している間の時間とし,膝関節内外反角度と内外反モーメントを算出した.

 主成分分析を用いて,側方カッティング動作中の膝関節内外反角度と内外反モーメント波形の特徴を抽出した.各群の主成分分析によって得られた主成分得点に対してshapiro-wilk検定を用いて,データの正規性を確認した.正規性を認め等分散の場合は,一元配置分散分析を用い,その後Tukeyの多重比較法を行った.正規性が認められなかった場合はKruskal - Wallis検定を用い,有意な差を認めた場合は,Bonferroniの補正を行ったMann - WhitneyのU検定を用いた.一元配置分散分析,Tukeyの多重比較法,Kruskal - Wallis検定では有意水準を5 %未満に設定した.Bonferroniの補正を行ったMann - WhitneyのU検定では有意水準を0.016%未満に設定した.

【結果】

膝関節内外反角度と内外反モーメントの主成分をそれぞれ3つ採択し,累積寄与率は80%以上であった.

膝関節内外反角度の主成分得点を比較し,第2主成分では,女性は男性と比較して主成分得点が有意に大きかった(男性 vs 女性:p= 0.001).また第3主成分では,女性は男性と比較し主成分得点が有意に小さかった(男性 vs 女性:p= 0.000).膝関節内外反モーメントの主成分得点を比較し,第1主成分では,女性は男性と比較して主成分得点が有意に大きかった(男性 vs 女性:p = 0.035).第2主成分では,女性は男性と比較し主成分得点が有意に大きかった(男性 vs 女性:p = 0.000).

【結論(考察も含む)】

側方カッティング動作において,女性は男性とは異なる運動学的および運動力学的動作を行っていることが示唆された.特に動作初期での外部膝関節外反モーメントと膝関節外反運動の組み合わせがACL損傷の発生に関与する可能性がある.

【倫理的配慮,説明と同意】

研究に先立ち,広島国際大学の人を対象とする医学系研究倫理委員会にて承認を得た(承認番号:倫16 – 47)。全ての被験者に研究の目的と趣旨を十分に説明し,文書による同意を得た上で計測を行った.

著者関連情報
© 2019 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top