主催: 日本理学療法士協会
会議名: 第53回日本理学療法学術大会 抄録集
開催日: 2018/07/16 - 2018/12/23
【はじめに、目的】
腰椎後方固定術(TLIF)後は,術前より能力障害や疼痛が改善するが,その一方で,術後,徐々に疼痛や能力障害が悪化する場合もあると報告されている.近年,腰椎術後の能力障害には運動恐怖や抑うつなどの心理的因子や,回避行動や過活動などの行動パターンが影響を与えると報告されている.しかし,術後に能力障害の悪化を起こしやすい要因は明らかではない.そこで,本研究の目的は,腰椎固定術後3ヶ月から6ヶ月の間の能力障害に影響する因子を検討することとした.
【方法】
対象は当院でTLIF施行患者40名(男性22名,女性18名,年齢64.0±10.5歳,Body Mass Index:BMI23.8±3.3kg/m2)とした.入院期間は5.5±0.9日,退院後は3ヶ月間,週1回の外来リハビリテーションを行った.評価時期は,術前,術後1ヶ月,術後3ヶ月,術後6ヶ月とした.評価項目は,腰痛に対する日常生活動作能力障害の程度(Oswestry Disability Index:ODI),痛みに対する対処方略(Coping Strategy Questionnaire:CSQ),ペーシング能力(Patterns of Activity Measure-Pain:POAM-P,ペーシングの項目のみ使用),疼痛自己効力感(Pain Self-Efficacy Questionnaire:PSEQ),腰痛・殿部下肢痛・しびれ(Visual Analog Scale:VAS)とした.統計学的解析は,術後3ヶ月から6ヶ月のODIの変化量(術後6ヶ月ODI-術後3ヶ月ODI:ΔODI)と術前および術後3ヶ月の各項目との関係をPearsonの相関分析を用いて検討した.有意水準は5%とした.
【結果】
術後3ヶ月から6ヶ月に能力障害が悪化した症例は40例中14名であった.Pearsonの相関分析の結果,ΔODIは術後3ヶ月におけるCSQと有意に負の相関を認めた(p=0.007,r=-0.42).
【結論】
本研究の結果から,腰椎固定術後3ヶ月の痛みに対する対処方略が,術後6ヶ月の能力障害悪化と関連する可能性が示唆された.痛みに対する対処方略では,痛みの強さそのものに捉われるのではなく,痛みに対してどのように行動するかに着目している.適切な対処方略は,身体活動を活性化させ,日常生活動作能力の改善に影響を与える.そのため,腰椎固定術後患者の能力障害予防には,術後3ヶ月までに痛みに対する対処方略を改善させる必要がある.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に則って計画され,あんしん病院倫理委員会にて承認を得た.すべての対象者に,本研究の趣旨と内容について説明を行い,書面にて同意を得た.