主催: 日本理学療法士協会
会議名: 第53回日本理学療法学術大会 抄録集
開催日: 2018/07/16 - 2018/12/23
【はじめに、目的】
女性は分娩を行うため骨盤の形態は、男性と異なることが知られている。また月経に伴い分泌される女性ホルモンの影響により、関節弛緩性の増大が長期間、繰り返し生じると経年的に骨盤形態に性差が生じる可能性がある。この点を調査するためには、骨盤形態に影響を及ぼす可能性のある経産婦を除外することが望ましい。そのため、今回の調査対象を骨盤形態が成熟していること、分娩を経験していないこと、脊椎の退行変性の要素が少ないといった条件を満たす必要があると考えた。そこで今回、これらの条件を満たす20歳から40歳未満の男性と未産婦を対象とし、骨盤形態の影響因子を検討した。
【方法】
対象は20歳から40歳未満の腰殿部痛のない男性47名(27.4±2.8歳)と未産婦48名(26.0±6.7歳)とした。骨盤の計測は骨盤外計測法に準じ、前棘間径(以下AID)、第一斜径、第二斜径を計測した。また、両PSIS間距離を後棘間径(以下、PID)とし計測した。得られたAIDとPIDを身長にて除し正規化を行った。骨盤の開き値はPIDをAIDで除した値とした。また一般情報として身長、体重、BMI、年齢を調査した。
解析は各一般情報より得られた値と各骨盤計測値に対し、対応のないt検定を実施し性差を比較した。次に骨盤開き値の影響度を調査するため、両群それぞれに対し、骨盤の開き値を従属変数、一般情報、AID、PIDを独立変数とし重回帰分析を実施した。
【結果】
各計測値と性差の相違は、一般情報において身長(p=.01)、体重(p=.03)に有意差を認め、両者とも男性の方が高値を示した。各骨盤計測値において正規化したAID(p=.01)に有意差を認め、未産婦の方が高値を示した。重回帰分析の結果は、骨盤の開き値と関連が認められた項目は、男性がPID(β=.95)、AID(β=-.23)、体重(β=.04)、未産婦がPID(β=.95)、AID(β=-.30)の順に骨盤の開き値への影響度が強いことが分かった。
【結論】
骨盤形態において実測値に性差を認めなかったが、正規化したAIDのみ未産婦の方が有意に高値を認めた。これらより、実測値では性差を認めなかったが、相対的に未産婦の方が前方の広い形態を呈していることが分かった。
骨盤の開きの影響因子については、重回帰分析の結果、両群ともPID、AIDの順で強かった。PIDは、仙骨の横径や加齢による腰椎後弯やそれに伴う仙骨のcounter nutationに伴い狭小化する可能性も考えられたが、年齢は両群とも説明変数として選択されなかった。そのため、加齢に伴う脊椎アライメントの変化ではなく、仙骨の横径や脊椎アライメントの個体差によりPIDが決定され、骨盤の開き値に影響を及ぼす可能性が考えられた。また、この影響度においても両群とも一定の関係性を有するため、非分娩者の骨盤形態への影響因子における性差の影響は少ないことが示された。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は、中部学院大学の倫理審査委員会の承認(承認番号;D17-0005)を得て実施した。計測は、女性検者により行われたこと、個室で計測を行うなど計測環境に配慮し実施した。