理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O8-6
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口述
同時収縮中の収縮強度の割合がIa相反抑制とD1抑制に与える影響
平林 怜江玉 睦明小島 翔伊藤 渉中村 絵美菊元 孝則大西 秀明
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キーワード: 同時収縮, Ia相反抑制, D1抑制
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抄録

【はじめに、目的】痙性疾患,小脳性失調症,パーキンソン病,脊髄損傷などの上位運動ニューロン障害では,主動作筋のみの運動が要求される時,拮抗筋に対して抑制が働かず,過剰な同時収縮を引き起こす.我々は前脛骨筋(TA)とヒラメ筋(Sol)の筋活動量を同程度にした最大随意収縮(MVC)の15%MVC以下でIa相反抑制が機能し,30%MVCでIa抑制が機能しないことを明らかにした.しかし,同時収縮中はTAとSolの収縮強度の割合が変動するため,筋活動と関節トルクを併用して詳細に脊髄相反性抑制を検討する必要がある.そこで,本研究の目的は,TAとSolの収縮強度の割合変化がIa相反抑制とシナプス前抑制(D1抑制)に及ぼす影響を明らかにすることとした.

【方法】対象は健常成人10名とした.測定肢位は股関節100°,膝関節120°,足関節120°とし,足関節はトルクセンサーを取り付けたフットプレートに固定した(竹井機器工業).筋電図はTAとSolに貼付し,サンプリング周波数は10kHz,ハンドパスフィルターは10Hzから1kHzとした.電気刺激は電気刺激装置(日本光電)を用いて条件刺激(腓骨神経)をM波閾値の刺激強度で刺激し,試験刺激(脛骨神経)をMmax振幅値の15-25%の刺激強度で刺激した.条件‐試験刺激(C-T)間隔を-2 ms,2 ms,20 msに設定し,条件刺激をしない試験刺激のみ(single)を加えた4条件をランダムにそれぞれ15回与えた.同時収縮課題は,Sol vs TA(A:5%MVC vs 5%MVC,B:5%MVC vs 15%MVC,C:15%MVC vs 5%MVC,D:15%MVC vs 15%MVC)の4課題としランダムに実施した.統計解析は,Sol H反射振幅値のpeak-to-peak値を算出し,H-reflex / Mmax ratioで刺激条件間を比較した.刺激条件間での比較には,反復測定二元配置分散分析を行い,事後検定として対応のあるt検定とBonferroni補正を行った.有意水準は5%とした.

【結果】刺激条件C-T間隔singleと比較して,同時収縮の課題Aでは2 ms(13.7%)と20 ms(25.7%),課題Bでは2 ms(11.6%)と20 ms(19.0%),課題Cでは20ms(12.5%),課題Dでは5 ms(11.3%)と20 ms(20.3%)でH-reflex / Mmax ratioが有意に減少した(p<0.05).関節トルク(正:底屈トルク,負:背屈トルク)は,課題Aは0.1±0.5 Nm,課題Bは-3.6±2.7 Nm,課題Cは5.7±2.6 Nm,課題Dは3.2±3.9 Nmであった.

【考察】本研究の結果より, Ia相反抑制は課題A,B,Dで機能し,D1抑制は全ての課題で機能していることが明らかとなった.Ia相反抑制とD1抑制は同時収縮で機能しないことが多くの先行研究で報告されているが,本研究の筋活動量と関節トルクを用いて詳細に検討した結果,Ia相反抑制は各筋の筋活動量ではなく,TA / Sol ratioに依存している可能性が示唆された.また,D1抑制では15%MVC以下の同時収縮中において.TA,Solの筋活動量に依存せず抑制が機能していることが明らかとなった.

【結論】同時収縮中のTA / Sol ratioがIa相反抑制の抑制度合いが変化することが明らかとなった.

【倫理的配慮,説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言の基づいたものであり,本学の倫理委員会の承認を得て実施した.また,対象者には実験内容及び対象者の権利についての説明を書面および口頭で十分に行い,実験参加への同意を得たうえで実験を実施した

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© 2019 日本理学療法士協会
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