理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P4-5
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変速トレッドミル歩行が歩行安定性に与える影響について
土田 将之安井 崇人鈴木 智高黒澤 千尋杉山 将史大滝 脩介山口 蔵人甲斐 義弘菅原 憲一
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抄録

【はじめに、目的】

 歩行は課題特異性を持った運動であるため、歩行練習は、日常生活の状況や環境を想定して行うことが重要である。したがって歩行速度についても、多様な速度で実施されるべきであるが、その方法や効果についての検討はされていない。現在、この問題に対応するため共同開発を行っている変速トレッドミルを用いて、歩行速度を機械的制御により加減させた場合の、身体反応と歩行安定性の変化を検証した。

【方法】

 対象は下肢に整形外科系疾患の既往のない健常成人22名とした。課題条件は以下の2条件とし、対象者をランダムに振り分けた。 変速群(n=11):30分間変速トレッドミル上を歩行する課題とした。速度は最大4.5km/h、最小2.0km/hとし、正弦波を描きながら15秒周期で反復する設定とした。一方、定速群(n=11)は開始直後の1.5分間(歩行開始後0~1.5分)、終了直前の1.5分間(歩行開始後28.5~30分)は変速歩行とし、間の27分間は4.0km/hの定速度に設定されたトレッドミル上を歩行する課題とした。歩行中は3軸加速度計を体幹背面L3レベルに貼付し各種解析を行った。サンプリング周波数は200㎐とした。データ解析は加速度計から記録される波形データから各群内で前後各1分間のa.平均ステップ数、b.平均ステップ時間、c.ステップ時間の変動係数、d.体幹加速度の鉛直成分・前後成分・側方成分のRoot Mean Square(RMS)、e.体幹加速度の鉛直成分の 自己相関分析の5つの指標を算出し、対応のあるT検定にて前後の差の分析を行った。有意水準は5%とした。

【結果】

 RMSは変速群の前後成分に有意な減少を示した(p=0.012)。平均ステップ数は両群で有意な減少を示した(変速群:p=0.014 定速群:p=0.033)。平均ステップ時間は両群で有意な増加を示した(変速群:p=0.009 定速群:p=0.027)。ステップ時間の変動係数は両群とも有意差は認めなかった。自己相関分析には両群とも有意な差は認めなかった。

【考察】

 歩行の動揺性の指標であるRMSについて、変速群の前後成分に有意な減少を示したことから、変速歩行には歩行速度が変化した際の身体の動揺性を軽減させる効果が認められた。両群とも平均ステップ数の減少と平均ステップ時間の増加がみられたことから、30分間の歩行を通して、ステップ数重視の歩行からストライド重視の歩行様式に変化したと考えられた。

【結論】

 変速トレッドミルでの歩行練習により速度変化に対する前後動揺が減少し、速度に応じたより安定した歩行が獲得できることが示された。一方、平均ステップ数や平均ステップ時間では両群ともに同様の傾向を示していた。今後より効果の高い変速歩行の介入条件を明らかにするため、介入時間や速度変化の再検討が必要である。

【倫理的配慮,説明と同意】

 研究対象者には、実験内容および被験者の権利についての説明を十分に行い、実験参加への同意を得た上で実施した。本研究は、神奈川県立保健福祉大学研究倫理審査委員会の承認を得て実施した。

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© 2019 日本理学療法士協会
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