主催: 日本理学療法士協会
会議名: 第53回日本理学療法学術大会 抄録集
開催日: 2018/07/16 - 2018/12/23
【はじめに、目的】外側距踵靭帯(LTCL)については,距骨下関節の安定性に関与していることが報告されているが,距骨下関節の過度な回外を制限するや,内・外転を制動するなど制動方向については異なる見解が報告されている.この原因として,LTCLの解剖学的報告が非常に少ないことが問題点として考えられる.そこで本研究では,LTCLの形態学的特徴を明らかにすることを目的とした.
【方法】対象は,固定遺体52体100足(年齢:79±13歳,男性55足,女性45足) を使用した.LTCLの分類方法は,LTCLの有無とCFLとの位置関係に着目して分類した.形態学的特徴としては,線維束長・幅をキャリパーを用いてLTCLの中央部で測定した.統計学的検討方法は,各Type間の線維束長と線維束幅の比較には,a chi-squared testを用いて行った.尚,有意水準は5%とした.
【結果】LTCLは4つのTypeに分類することができた.TypeⅠはLTCLが踵骨部でCFLと結合するもの,TypeⅡ-a はLTCLが踵骨部でCFLと並走するもの,TypeⅡ-b はLTCLがCFLと完全に独立しているもの,TypeⅢはLTCLが欠損するものであった.TypeⅠは16足(16%),TypeⅡ-aは20足(20%),TypeⅡ-bは2足(2%),TypeⅢは62足(62%)であった.また,全てのLTCLは起始部の距骨においてATFLと結合していた.LTCLの形態学的特徴は,線維束長が25.2 ± 4.0mm,線維束幅が3.5±3.2mmであった.線維束長・幅において,各Typeで統計学的に有意な差は認めなかった.
【考察】Trouiloud(1988)らは,TypeⅠは35%,TypeⅡは23%,TypeⅢは42%と報告している.本研究結果は,LTCLがCFLから分岐するTypeⅡ(TypeⅡ-a・TypeⅡ-b)については,先行研究と類似しているが,TypeⅠとTypeⅢの割合については大きく異なっていた.LTCLの形態学的特徴は,Burksら(1994) は,LTCLの線維長は26.5mm,線維幅は4.4mmであったと報告しており,本研究結果と類似する結果であった.CFLと比較すると,線維束長については,19.5±3.9mm(Milner.1998),27.69±3.30mm(Siegler.1988),線維束幅については,4.68±1.34mm(Taser.2006),5.3mm(Burks.1994)であると報告されている.従って,LTCLは,線維束長・幅においてCFLと類似した形態を呈していると考えられた.
【結論】LTCLの出現率は38%であり、またLTCLはCFLと線維束長・幅において形態学的に類似していた.今後は,本研究結果を基に生体力学的な検証を行い,機能的役割を明らかにしていく必要がある.
【倫理的配慮,説明と同意】本研究で使用した遺体は,全て死体解剖保存法と献体法に基づき、教育と研究のために本学に献体された標本である.