理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O4-5
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口述
卵巣摘出ラットに対するZoledronateとTreadmill trainingの併用療法が骨微細構造に与える影響
坪内 優太片岡 晶志池田 真一津村 弘
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抄録

【はじめに、目的】転倒・骨折が原因で要介護状態に陥る高齢者は11.9%であり,その一因である骨粗鬆症の有病率は60歳以上の高齢者で24.9%とされている.高齢社会である我が国において,これらの対策は急務である.骨粗鬆症の治療は,一般的に薬物療法と運動療法が実施されており,薬物療法については,その臨床的効果も示されてきている.一方で,運動療法の効果に関する研究はあるものの,骨強度の規定因子の一つである骨微細構造への効果を示す報告は少ない.また,臨床で一般的に実施されている運動療法と薬物療法の併用の効果を示した報告は少ない.本研究の目的は,Ovariectomy(OVX)ラットへのZoledronate(ZA)とTreadmill Training(TT)併用療法が骨微細構造に与える効果を検討することである.

【方法】24週齢雌SDラット40匹に対してOVXを施行した.2ヶ月後にControl群(C群),ZA投与群(Z群0.1mg/kg単回投与),TT群(T群:20m/min, 1h/day, 5day/week),ZA投与+TT併用群(Z+T群)の4群に各10匹ずつ振り分けた.さらに,OVXを施行しないSham群(S群)を10匹設定した.介入6週後に屠殺,大腿骨を採取し,μCT(SkyScan1172,Kontich,Belgium)による骨密度および骨形態計測を行った.大腿骨遠位骨幹端部を撮影し,海綿骨における骨組織容積比(BV/TV),骨梁幅(Tb.Th),骨梁間距離(Tb.Sp),骨梁数(Tb.N),さらに皮質骨面積(Cr.Ar)と皮質骨厚(Cr.Th)を計測した.統計解析にはSPSS22.0を使用,一元配置分散分析をした後,post hoc tsetとしてBonferroni検定を用い,各群間の比較を実施した.

【結果】海綿骨の骨密度はS群に比べ,C群で有意に低値を認めたが,その他は有意差を認めなかった.また,皮質骨の骨密度においては各群間で有意な差を認めなかった.骨形態計測の結果では,BV/TVがC群およびZ群と比較し,S群およびZ+T群で有意に高値を示した.Tb.ThはS群に比べ,C群とZ群,T群で有意に低値を示したが,Z+T群とは有意差を認めなかった.Tb.NはS群に比べ,Z群で有意に低値を示した.Cr.Arでは各群間で有意差はなかったが,Cr.ThはZ群とT群で有意差を認めた.

【考察】ZAは破骨細胞のアポトーシスを促す骨吸収抑制剤であり,骨代謝回転を低下させることで,骨密度や骨微細構造の維持・改善を図る骨粗鬆症治療薬である.一方で,運動療法は荷重や筋収縮によるメカニカルストレス,骨格筋から分泌されるサイトカインによって,骨形成を促進させる効果があるとされている.本研究の結果から,ZA投与のみでは骨微細構造に対する効果は不十分である可能性が示唆された.また,ZAとTTの併用により,骨吸収を抑制しつつ,骨形成を促進させて骨微細構造の改善させる可能性が示唆されたが,詳細なメカニズムについては今後検討が必要である.

【結論】閉経後骨粗鬆症患者の骨微細構造に対しては,薬物療法や運動療法の単独治療では改善が不十分であり,両者の併用療法が有効であることが示唆された.

【倫理的配慮,説明と同意】動物の愛護及び管理に関する法律を遵守し,学内規程の「大分大学医学部動物実験指針」に基づき,動物実験計画書を動物実験委員会に提出し,同委員会の承認を得て適正な動物実験等の方法を選択して実施した.

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© 2019 日本理学療法士協会
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