主催: 日本理学療法士協会
会議名: 第53回日本理学療法学術大会 抄録集
開催日: 2018/07/16 - 2018/12/23
【はじめに】特別支援学校に関わる理学療法士(以下PT)は、学校で児童生徒が主体性をもった生活を送るために専門性が発揮されることを期待されている。横浜市では学校常駐PTの採用枠はないが、2013年度にPT資格を持った教員が一般教員枠で採用され、現在は配属校で校内相談や外部専門職との連携を図る「自立活動コーディネーター(以下自活CO)」として業務を進めている。今回、自活COが校内で個別の教育支援計画や指導計画作成に関わったケースについて、その内容を抽出し、学校内で働く理学療法士に求められる専門性について考察することを目的とする。
【方法】横浜市立A特別支援学校(自活CO在籍校)の教員40名に対して半構造化インタビューを実施し、個別の教育支援計画および指導計画作成時の困り感、および困り感解決に向けた方策についてのエピソードを抽出した。
【結果】個別の教育支援計画については40名中31名が作成時に困り感を感じたことがあると回答した。困り感のエピソードとしては「医学用語が分からない」「アセスメントが難しい」「過去の状況の確認がとれない」といった内容が多く挙げられた。個別の指導計画については40名中39名が作成時に困り感を感じたことがあると回答し、「評価が難しい」「今の目標が合っていないことは何となく分かるが、どう修正したら良いか分からない」「予後予測が難しい」といったエピソードが多く挙がったほか、「外部のPTやOT、医師からのアドバイスを活かしたいが、どう反映したら良いか分からない」という外部専門職のアドバイスに関する内容や、「授業や給食での目標設定」「トイレを含めたADL、協力動作」など学校生活全般に関する内容も多く挙がった。困り感の解決にあたっては、方策の一つとして39名全員が自活CO校内相談を活用したことがあり、内容については「用語に関する相談」(33名)、「外部専門職のアドバイス反映に関する相談」(19名)、「支援方法関する相談」(34名)、「個別学習、集団学習に関する相談」(15名)「評価・目標設定に関する相談」(14名)という結果を得た。
【考察】本研究では、特別支援教育の根幹となる個別の教育支援計画や指導計画の作成にあたって、目標設定や評価、支援の手立てを考えたり、外部専門職からのアドバイスを活かしたりする局面で困り感を感じる教員が多いことが示された。解決にあたって、自活COが普段から児童生徒の生活、学習の様子や担任教員との関わりを理解していることで、より効果的なアドバイスやコーディネートが可能となっていた。学校内で働く理学療法士は、教員との同僚性、共感性を重視しながら、アドバイスのタイミングや分量、内容を工夫していくという点に一つの専門性があり、支援の主役となる担任教員が主体的に計画を作成し、指導にあたっていくための支援をするという視点が求められることが示唆された。
【倫理的配慮,説明と同意】ヘルシンキ宣言に基づき、本研究の参加者には事前に研究の趣旨、個人情報の扱いについて十分に説明し、書面にて参加への同意を得た。