主催: 日本理学療法士協会
会議名: 第53回日本理学療法学術大会 抄録集
開催日: 2018/07/16 - 2018/12/23
【はじめに】Campomelic Dysplasia(以下CD)とは、骨系統疾患の1つに含まれ、特徴的な骨異常を有し、多くは周産期に呼吸不全で死亡する予後不良な疾患である。呼吸管理により長期生存例が増えているが、理学療法(以下PT)に関する報告は少ない。今回、非侵襲的呼吸管理で退院調整中のCD児に発達支援を行ったので報告する。
【症例紹介】38週5日予定帝王切開、Apgar Score 6/7で出生しNICUに入室。出生時体重2,951 g、身長43cm。生後4か月にGCUへ転棟。1歳3か月現在、肺低形成、軟口蓋裂、扁平喉頭、舌後退、気管軟化のためNasal-CPAP、酸素2Lで24時間使用し、栄養は経管にて摂取、吸引を適宜要す。高度難聴、股関節脱臼、反張膝、足部変形を認める。体重4,990 g、身長58 cm、頭囲46 cm、胸囲34 cm、安静時心拍数130 bpm、呼吸数45 回/min、経皮的動脈血酸素飽和度100 %である。
【経過】生後2か月よりPTを開始。ポジショニングを中心に行なっていたが、自宅退院の方針に伴い1歳より介入頻度を週5回としPTプログラムを変更した。
<1歳時評価>筋緊張は低く、未定頸。抗重力姿勢保持は困難。四肢を活発に動かし、動きが大きくなると反張膝が顕著になった。姿勢は背臥位が多く、座位保持装置は好まなかった。姿勢変換は困難。遊びは四肢を動かす、玩具を振って感覚を楽しむ。表出は笑顔もあるが、生理的欲求で泣くことが多かった。遠城寺式・乳幼児分析的発達検査は移動運動0~1か月、手の運動7~8か月、基本的習慣0~1か月、対人関係5~6か月、発語5~6か月、言語理解4~5か月であった。
PTプログラムは、自発的な姿勢変換を促す目的に寝返り練習を行った。また、頚部・体幹の筋力強化を目的に頭部の重さを免荷した座位、腹臥位練習を行った。
<3か月後評価>側臥位への寝返りとベッド柵を蹴りピボットターンにて姿勢変換が行えるようになった。姿勢は背臥位だけでなく側臥位をとることができ、座位保持装置にも1時間以上座れる日が増えた。遊びは操作性のある玩具やDVD鑑賞を楽しむようになった。音声が増え、泣く以外に喜怒の意思表示ができるようになった。遠城寺式・乳幼児分析的発達検査は移動運動1~2か月、手の運動8~9か月、対人関係6~7か月、発語8~9か月と変化を認めた。
【考察】本症例は疾患特有の大きな頭部や低緊張、肺低形成により、容易に呼吸状態が増悪する危険性がある。しかし、比較的呼吸状態が安定した時期に、バイタルや表情に注意しつつ積極的に介入したことで運動面・知的面の発達を促すことができたと考える。本人が安楽で受け入れやすい背臥位から介入を行なうことで姿勢変換が可能となり、頭部の重さを免荷した座位や腹臥位練習により頸部・体幹の筋力が向上し座位保持時間が延長したと考える。しかし、獲得した姿勢変換は膝関節を過伸展させる方法であり反張膝の増悪が懸念されるため、今後の対応を検討する必要があると考えている。
【倫理的配慮,説明と同意】ヘルシンキ宣言に基づき、患者本人とその保護者に対し、「症例報告の目的・公開方法・協力と取り消しの自由・人権擁護と個人情報の保護・発表者の連絡先・同意書の管理について」を書面で説明した。その後、保護者より書面にて発表を行う同意を得た。