理学療法学Supplement
Vol.47 Suppl. No.1 (第54回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-85
会議情報

ヤングセミナー
臨床判断に役立つ指標の提案
天野 徹哉
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

1.客観的指標の必要性

 対象者の状態に応じた適切な理学療法を提供するためには,「情報収集・理学療法評価→アセスメント→治療→再評価」という一連の行動様式が不可欠である。すなわち,対象者の病態と治療前後の変化を的確に把握することによって,多種多様な臨床症状や障害像に対応した適切な理学療法プログラムを選択することが可能になる。定量的評価は,対象者の病態やその変化を具体的に把握するのに役立つため,適切な治療法の選択などの臨床判断に活用できる。一方で,定量的評価には測定値を一般化できる値がなければ,対象者の評価結果を正しく解釈することは困難となる。また,定量的評価の測定誤差が明らかになっていなければ,治療前後の変化を適切に判断することは困難となる。したがって,理学療法評価の標準値や最小可検変化量(minimal detectable change:以下,MDC)を明らかにし,暗黙知であった理学療法士の臨床判断を形式知化する必要があると考える。

2.多施設共同研究によるデータの蓄積

 我々の研究グループ(physical therapy diagnostics group:以下,PTDG)では,2013年7月から2018年12月までの間,手術療法の適用となった変形性膝関節症患者を対象に多施設共同研究を実施した。多施設共同研究では,多くの症例データを蓄積することによって,層別化した客観的指標を抽出することを目的とした。その結果,1,103例(人工膝関節全置換術:797例,人工膝関節単顆置換術:306例)のデータを収集し,理学療法評価の標準値・MDCと臨床予測式(clinical prediction rule:CPR)を抽出することができた。我々の多施設共同研究において得られた指標は,理学療法士の臨床判断に活用できる可能性があるため,根拠に基づいた理学療法(evidence-based physical therapy:EBPT)の実践に繋がると考える。

3.臨床判断に役立つ指標の提案

 日々の臨床活動において適切な臨床判断を行うためには,客観的指標を活用する必要がある。理学療法士の臨床判断の客観性を高めることができれば,臨床研究への発展に繋がるとともに,対象者に病態や治療効果に関する内容を分かりやすく説明することが可能になると考える。本セミナーでは,PTDGによる多施設共同研究の成果を踏まえて,理学療法士の臨床判断に役立つ指標について紹介する。

著者関連情報
© 2020 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top