理学療法学Supplement
Vol.47 Suppl. No.1 (第54回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: B-36
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共催シンポジウム
粗大運動時の大脳皮質酸素化ヘモグロビンおよび脱酸素化ヘモグロビンの変動
椿 淳裕
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抄録

 脳内の神経細胞が活動するためには,他の臓器と同様にエネルギー源と酸素が必要である。脳はその重量に比して,多くの血液が供給され,酸素消費も多い。神経活動にはグルコースと酸素が必要であり,これらは血流により脳へ運ばれる。神経細胞が活動すると,グルコースの消費や乳酸の産生による代謝需要により脳血流が増加し,グルコースおよび酸素の供給が行われる(Lecrux C and Hamel E. 2011)。このように,神経活動と血流の変化の間には密接な関係があることから,機能的イメージングではこれらを基礎として,神経活動に伴うエネルギー代謝を測定している。

 脳機能イメージング法にはいくつかの種類があるが,運動に伴う変化をリアルタイムに,かつ経時的に捉えるには,座位や立位での測定が可能であるなど身体拘束が少ないこと,課題の制約が少ないこともあり,近赤外分光法(near-infrared spectroscopy, NIRS)が用いられることが多い。NIRSは,神経血管カップリングと神経代謝カップリングを背景に,生体透過性の高い近赤外光に対する吸光度の違いを利用して,酸素化ヘモグロビンおよび脱酸素化ヘモグロビンを計測することで,非侵襲的に神経活動を捉えようとする技術である(Ferrari M, Quaresima V. 2012; Scholkmann F, et al. 2014)。前頭前野を関心領域とした研究が多いが,多チャネルでの計測ではより広い領域を対象として計測が行われている。

 我々はこのNIRSを用い,粗大運動中あるいは運動後の酸素化ヘモグロビンおよび脱酸素化ヘモグロビンの変化を捉える研究を継続している。脳血流は,神経細胞の活動だけでなく,動脈血二酸化炭素分圧の変化によっても変化する。またNIRSは,全身的な循環変動の影響を受けることも指摘されている。このシンポジウムでは,NIRSを用いた研究結果を紹介するとともに,今後の課題などについても共有したいと考える。

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