日本口蓋裂学会雑誌
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原著
口唇裂・口蓋裂患児の摂食嚥下機能に関する検討
金高 弘恭幸地 省子新井 映子中條 哲徳川 宜靖
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2010 年 35 巻 1 号 p. 28-34

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抄録
本研究では口唇裂・口蓋裂患者の摂食嚥下機能を評価するために新しく機能評価用ゼリーを開発し,口唇裂・口蓋裂患児および非裂児へ適用することにより,口唇裂・口蓋裂患児の摂食嚥下機能の経年的な成長発育変化および非裂児との比較について検討を行った。
対象は東北大学病院附属歯科医療センター顎口腔機能治療部にて咬合管理を行っている2歳から6歳までの口唇裂・口蓋裂患児(患児群)167人と,宮城県内および静岡県の保育園・幼稚園に在籍する2歳から6歳までの園児(対照児群)45人とした。ゼラチン,グラニュー糖,レモンエッセンスから,硬さの異なる3種の摂食嚥下機能評価用ゼリーを作製し,咀嚼開始から嚥下が完了するまでの時間および咀嚼回数について計測を行った。患児群,対照児群とも,2-3歳群および4-6歳群の2群に分類し,各群間で比較検討を行ったところ下記の結果を得た。
1.患児群,対照児群とも,評価用ゼリーの硬度が増すに従い,摂食嚥下時間および咀嚼回数が有意に増加した。
2.患児群では,成長発育に従い,硬いゼリーで摂食嚥下時間が有意に減少し,軟らかいゼリーで咀嚼回数が有意に増加した。また,全ての硬さの評価用ゼリーにおいて,成長発育に従い,単位時間あたりの咀嚼回数が有意に増加した。
3.患児群と対照児群の比較では,2-3歳群,4-6歳群とも,摂食嚥下時間および咀嚼回数に明らかな有意差は認められなかった。
本研究結果より,2歳や3歳という低年齢においても,食品の硬さを弁別し,咀嚼や摂食嚥下の様式を変化させている可能性が示唆された。また,口唇裂・口蓋裂を有していても,幼児期より適切な外科的治療および咬合管理が行われていれば,摂食嚥下機能に影響をおよぼすことが少ないと考えられた。
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© 2010 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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