抄録
粘膜下口蓋裂に瘻孔が発生することにより開鼻声を認め,これにより手術が必要となることがしばしばある。しかしながら,これまで粘膜下口蓋裂に発生した瘻孔に対する手術の適切な時期に関して述べられた報告は,われわれの渉猟する限り見られなかった。今回われわれは,先天性および後天性の瘻孔を生じた粘膜下口蓋裂の2例を報告する。症例1は5歳男児。生下時より粘膜下口蓋裂および開鼻声を認めており,粘膜下口蓋裂および瘻孔切除の適応があることは明らかであった。症例2は2歳男児。粘膜下口蓋裂を認めていたが,後天性の瘻孔をきたした。この患者はまだ言語の評価は困難であったが,将来開鼻声をきたす可能性が高いと判断し口蓋形成術および瘻孔切除術を施行した。われわれは,先天性・後天性を問わず粘膜下口蓋裂に瘻孔を認めた場合,口蓋形成術を一般的に行える年齢に患者が達していれば手術を行うべきであると考える。もし,年齢が達していなければ,一般的に口蓋形成術を行う年齢において手術するのがよいと考える。