日本口蓋裂学会雑誌
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口唇裂・口蓋裂児の親の関心に関する調査
佐藤 亜紀子澄田 早織木村 智江三浦 真弓加藤 正子大久保 文雄吉本 信也
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2011 年 36 巻 3 号 p. 174-182

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抄録

昭和大学口蓋裂診療班で治療中の口唇裂・口蓋裂児の親の関心事を明らかにして助言の指針を得ることを目的に調査を行った。関心事の変化の有無を検討するため,三浦ら(1993)とほぼ同様の方法で調査を行った。
対象は口唇裂・口蓋裂児の親200名で,患児の裂型は口唇(顎)裂37例,唇顎口蓋裂120例,口蓋裂単独43例,患児の年齢は0歳から12歳11か月であった。
口唇裂・口蓋裂に関連する事柄30項目からなる質問用紙を作成し,親にとって関心のある3項目に順位を記入するよう依頼し,一番関心がある項目を全体,裂型別,年齢区分別,性別に分析した。さらに全体の結果は,前回と比較するために親が選択した全ての項目を合計して集計,検討した。
30項目は「哺乳・摂食」,「発達」,「手術」,「言語」,「耳鼻疾患」,「歯科的問題」,「容貌」,「社会適応・性格」,「進学・就職」,「結婚・出産」,「遺伝」,「疾患の告知」,「X線撮影」,「治療費」,「その他」の15領域に分類して集計,検討した。
1.親全体では,「歯科的問題」,「手術」,「言語」,「疾患の告知」の順で関心が高かった。
2.裂型別では,自身の児が現在治療中,または今後治療を行う領域への関心が高く,年齢区分別では,自身の児の年齢で受ける治療内容と親の関心事が対応していた。
3.三浦ら(1993)と今回の調査の比較では,関心の高い上位7領域の内容に変化は見られなかったが,「遺伝」の減少傾向,「言語」「疾患の告知」の増加傾向がみられた。
4.医療側は各領域での専門的な治療を進めるだけでなく,治療全体の流れの中で患児にあった適切な助言,指導を行うことが必要である。治療方法の発展とともに,家族や患児の心理社会的支援を充実させることが,今後のチーム医療の重要な課題である。

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© 2011 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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