日本口蓋裂学会雑誌
Online ISSN : 2186-5701
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原著
わが国における口唇裂・口蓋裂児に対する一次治療の実態
―日本口蓋裂学術調査委員会報告―
内山 健志山下 夕香里須佐美 隆史幸地 省子鈴木 茂彦高木 律男舘村 卓中野 洋子澁井 武夫道 健一西尾 順太郎秦 維郎
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ジャーナル 認証あり

2012 年 37 巻 3 号 p. 187-196

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抄録

Objective:日本における口唇裂・口蓋裂児に対する一次治療の実態を明らかにすることを目的とした。
Design:日本口蓋裂学会学術調査委員会の指示のもと,口唇裂・口蓋裂の一次治療を行なっている日本の医療機関に対して,小冊子スタイルのアンケートを通して得られたデータの解析に基づいて行ったretrospectiveな全国調査である。
Participants, Patients:1996年から2000年までに一次治療を行なった口唇裂・口蓋裂児4,349名で,参加した医療機関は107施設である。
Main Outcome Measure (s):裂型,側性,乳児口蓋床の使用,一次手術の時期と術式が107施設の術者によって評価された。
Results:総計2,874名の唇顎口蓋裂と口蓋裂単独患児のうち,口蓋床を使っていたのは1,087名(37.8%)で,口蓋床を使っていないのは1,787名(62.2%)であった。片側口唇裂一次手術は90%以上の患児で,2~6ヶ月以内に行なわれていた。両側口唇裂では285名(44.5%)において左右同時手術が行なわれていたが,258名(40.2%)が二段階法で行なわれていた。口蓋裂一次手術は2,212名(76.9%)に一期的手術が行なわれていたが,二段階口蓋形成術はすべての口蓋裂児の中で262名(9.1%)に行なわれているにすぎなかった。残り400名(14%)については治療情報の入手ができなかった。
Conclusion:本調査によってわが国の口唇裂・口蓋裂一次治療における概況を明らかにすることができた。得られた結果から地域での専門中核病院を増やす必要性のあることと,わが国での治療の選択肢が広いものであることが示唆された。

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© 2012 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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