日本口蓋裂学会雑誌
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原著
口蓋裂術後の哺乳におけるシリコンゴム製飲み口(Kiss® 2)の有用性
藤田 研也杠 俊介大坪 美穂栁澤 大輔戸澤 ゆき大畑 えりか高清水 一慶松尾 清
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キーワード: 口蓋裂, 哺乳, 術後管理
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2013 年 38 巻 1 号 p. 86-89

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抄録

【目的】口蓋裂手術後の哺乳瓶使用は口蓋裂手術創を圧迫し,創離開を生じる危険性があるため,哺乳瓶使用は制限されることが多く,術後経管栄養を推奨する報告も多い。今回我々は先端の短い形状の飲み口である「シリコンマルチキャップペットボトル用Kiss®2」(ICIデザイン研究所)(以下Kiss2)を口蓋裂術後の経口哺乳に利用した。
【対象と方法】口蓋裂術後の1歳児12人を対象とした。内訳は口蓋裂単独(ICP)6例,片側唇顎口蓋裂(UCLP)5例,両側唇顎口蓋裂(BCLP)1例であった。口蓋裂形成手術翌日よりKiss2,あるいはスプーン,コップによる哺乳を許可した。
【結果】12例中5例では手術翌日よりKiss2による哺乳が可能であった。他の7例については,Kiss2よりもスプーン,コップでの哺乳を好んだ。Kiss2が利用できなかったのは術前に十分な練習ができなかった症例であった。Kiss2使用の成否は,術後の口蓋瘻孔発生,補液必要日数,入院期間に影響を与えなかった。
【考察】口蓋裂手術の縫合創は,哺乳の際に口蓋裂用乳首でちょうど圧迫される位置にある。Kiss2は先端が短い形状であるため,縫合部を直接圧迫しない。口唇で押す力の加減で,出る水分の量を微調整できるため,吸啜力の弱い口蓋裂児でも術前から哺乳が可能であった。使用には若干の慣れが必要であり,術前の練習が必要である。ただし,術後管理としての哺乳制限の必要性については,検討の余地がある。

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© 2013 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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