日本口蓋裂学会雑誌
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症例
下顎前歯を移植することで咬合の改善を図った上顎片側側切歯先天欠如を伴う唇顎口蓋裂の2症例
鈴木 一史松林 幸枝橋本 幸治石渡 靖夫山崎 安晴武田 啓鳥飼 勝行
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2013 年 38 巻 3 号 p. 291-299

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抄録
今回我々は片側の上顎側切歯先天欠如を伴う唇顎口蓋裂患者に対し,下顎前歯の移植を伴う矯正歯科治療により,顔貌および咬合状態ともに良好な結果を得た2例を経験したので報告する。〔症例1〕初診時年齢8歳2ヶ月,左側唇顎口蓋裂の男児で上顎歯列弓の狭窄と前歯から臼歯部にかけてのクロスバイトを認めた。ポーター型拡大装置を使用後,顎裂部骨移植を施行した。その後,セクショナルアーチにより被蓋の改善と上顎前歯の排列を行い,保定装置にて経過観察を行った。17歳3ヶ月時に再診断を行い,マルチブラケット治療中に下顎前歯を上顎左側側切歯先天欠如部へ移植する方針とした。18歳1ヶ月時に移植を行い,19歳4ヶ月時に保定を開始した。〔症例2〕初診時年齢8歳7ヶ月,両側唇顎口蓋裂の女児で中間顎の前右方偏位と著しい過蓋咬合と上顎歯列弓狭窄を認め,前歯から臼歯部にかけてのクロスバイトを認めた。ポーター型拡大装置による歯列弓拡大後,中間顎骨切りと同時骨移植を施行した。セクショナルアーチで被蓋の改善と上顎前歯の排列を行い,保定装置にて経過観察を行った。14歳11ヶ月時に再診断を行い,マルチブラケット治療中に下顎前歯を上顎左側側切歯先天欠如部へ移植する方針とした。15歳3ヶ月時に移植を行い,17歳1ヶ月時に保定を開始した。それぞれ移植後3年10ヶ月,6年8ヶ月現在,経過は良好である。
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© 2013 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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