日本口蓋裂学会雑誌
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原著
協調運動障害が口蓋裂術後構音障害の発現に及ぼす影響
日景 朱美野原 幹司杉山 千尋田中 信和高井 英月子上田 菜美深津 ひかり阪井 丘芳
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ジャーナル 認証あり

2016 年 41 巻 1 号 p. 1-7

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抄録

【緒言】唇顎口蓋裂患者における構音障害の発現には,鼻咽腔閉鎖機能や口蓋形態が深く関与していることが知られているが,それらに大きな差がないにも関わらず,構音障害を発現する患者と発現しない患者が存在する。このことは構音障害の発現には鼻咽腔閉鎖機能や口蓋形態以外の要因が関与している可能性があることを示唆している。構音障害を認める者は協調運動にも問題があることが非唇顎口蓋裂患者において報告されているが,唇顎口蓋裂患者においては検討がなされていない。そこで我々は,唇顎口蓋裂患者の協調運動と構音障害の発現に関連があるか調査を行った。
【対象と方法】2011年11月〜2012年4月の間に経過観察や言語訓練のために大阪大学歯学部附属病院を受診した唇顎口蓋裂患者61名を対象とした。保護者に,発達性協調運動障害のスクリーニング質問紙の記入を依頼した。対象を構音障害あり群/なし群の2群に分け,2群間の協調運動((1)総合得点(2)粗大運動得点(3)微細運動得点(4)全般的協応性得点)の差異の有無の判定を行った。
【結果】(1)総合得点は,構音障害なし群においては基準値未満の者は7名,以上の者は25名であり,構音障害あり群においては基準値未満の者は14名,以上の者は15名であり,両群間に有意差を認めた(p<0.05)。
(2)粗大運動得点および(3)微細運動得点では,構音障害なし群,構音障害あり群の両群間に有意差を認めなかった。
(4)全般的協応性得点は,構音障害なし群においては基準値未満の者は5名,以上の者は27名であった。構音障害あり群において基準値未満の者は13名,以上の者は16名であった。両群間に有意差を認めた(p<0.05)。
【考察】唇顎口蓋裂の構音障害の発現においては,構音器官という局所の問題以外に全身の協調運動障害も要因となる可能性が示された。

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© 2016 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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