抄録
歯槽骨延長術とインプラント義歯を適用して咬合を再建し,顎裂部の補綴処置を行った片側唇顎口蓋裂の1例を経験したのでその概要を報告する。患者は22歳男性で,上顎左側顎裂部側切歯の欠損を主訴として当科を受診した。萎縮により低位となった顎裂部の骨架橋高径の増大を図るため,両隣在歯を抜歯した上で歯槽骨延長を行い,同部にインプラント2本を埋入した。インプラント埋入後約6ヶ月経過時のアバットメント連結術に遊離歯肉移植による口腔前庭拡張術を行い,プロビジョナルレストレーションによる歯肉形態修正後,補綴装置を装着した。その結果,機能的,審美的に良好な補綴修復が可能となった。以上のことから,骨高径が不足した顎裂部にインプラント義歯を適用する際は,歯槽骨延長術による骨造成が有用と考えられる。