日本口蓋裂学会雑誌
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43 巻, 3 号
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原著
  • 松井 桂子, 野上 晋之介, 山内 健介, 君塚 哲, 越後 成志, 高橋 哲
    2018 年 43 巻 3 号 p. 189-196
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/22
    ジャーナル 認証あり
    顎裂部への新鮮自家腸骨海綿骨細片移植(以下骨移植)において,よりよい成果を得るため移植骨部の経時的変化についてX線CT画像分析を行い,最適な骨移植について検討した。
    2011年10月から2015年3月までに東北大学病院口腔外科および歯科顎口腔外科において通法に従い骨移植し,当院電子カルテ上分析可能な資料のそろっている9症例10顎裂(手術時平均年齢:11.9歳。UCLA:2例,BCLA:1例,UCLP:6例。平均顎裂幅径:歯槽頂側7.6mm,鼻腔側16.0mm。平均移植骨量:4.8g)の術前,術後1ヶ月および6ヶ月時に撮影したX線CT画像を用いて後ろ向き調査を行った。
    術前の固有顎裂面積平均:94.0mm2に対する術後1ヶ月時の移植骨部面積は平均:138.4mm2で,骨移植率が平均154.4%であった。また術後6ヶ月時に形成された骨架橋面積は平均:100.2mm2であり,術前の固有顎裂面積に対して充分量の平均109.9%の骨架橋形成がみられた。一方,術後6ヶ月時の骨架橋面積は術後1ヶ月時の骨移植部面積に対し平均:72.0%に減少していた。
    以上より,顎裂骨移植時に固有顎裂の大きさに対して約1.5倍量の骨を移植した場合,術後6ヶ月で形成される骨架橋は骨移植時の約7割に減少してほぼ顎裂部を充足させていることから,骨移植時には固有顎裂部に対して吸収量を留意した過分量の骨を移植すべきことが示唆された。
  • 田邉 毅, 小薗 喜久夫
    2018 年 43 巻 3 号 p. 197-201
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/22
    ジャーナル 認証あり
    【目的】近年我々は,術前顎矯正を使用し,中間顎の位置矯正,鼻柱の伸展と鼻翼の矯正を術前に行うようになった。同時に我々は,その効果を口唇鼻形成に有効に反映させる術式として,Cuttingらの行っている方法に準じて,両側口唇鼻形成を行うようになった。手術数年後の患児の鼻の形状を計測し,従来行われてきた方法と,Cutting法とを比較検討した。
    【対象】対象は24名(男児15名,女児9名)。10名はCutting法で行った群,14名はそれ以外の方法で行った群。
    【方法】術後平均3年で写真を撮り,鼻尖までの高さ(Nasal Tip Projection),鼻柱の長さ(Columella Length),鼻翼基部間の距離(Nasal Width)を計測,そして,口唇と鼻柱のなす角(Nasolabial Angle)の角度計測を行った。
    【結果】鼻尖までの高さ,鼻柱の長さ,鼻翼基部間の距離そして口唇と鼻柱の成す角,すべてでCutting法の群は従来の方法の群よりも有意によかった。
    【まとめ】Cutting法はこれまで行ってきた方法よりも良い結果が得られていることがわかった。
  • —口唇口蓋裂とHemifacial microsomiaにおける検討—
    平野 友紀子, 高橋 路子, 須佐美 隆史, 大久保 和美, 岡安 麻里, 井口 隆人, 杉山 円, 内野 夏子, 西條 英人, 星 和人
    2018 年 43 巻 3 号 p. 202-208
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/22
    ジャーナル 認証あり
    東京大学医学部附属病院口腔顎顔面外科矯正歯科言語外来を受診した口唇口蓋裂児もしくはHemifacial microsomiaを有する患者のうち鼻咽腔構音を認めた39症例の疾患名,鼻咽腔閉鎖機能,聴力,言語発達,構音訓練,合併した構音障害の種類について調査した。
    全症例の38%に鼻咽腔閉鎖不全を認めた。また20%に聴覚障害を認め,hemifacial microsomiaが3例いた。言語発達の遅れも高い確率で認められた。
    鼻咽腔閉鎖機能が良好であることと鼻咽腔構音が単独で見られる場合に改善がみられる傾向があった。
    合併しやすい構音障害は声門破裂音であった。
  • 松原 まなみ, 落合 聡, 中村 由紀, 早﨑 治明
    2018 年 43 巻 3 号 p. 209-215
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/22
    ジャーナル 認証あり
    健常乳児の口蓋には吸啜窩が存在し,吸啜時に乳首を固定して哺乳を円滑にする役割を果たしている。口蓋裂児の哺乳機能を補うために口蓋床を装着する治療が行われるが,我々は口蓋裂児の口蓋形態を可能な限り健常児に近づけることで吸啜運動が活発になり効果的な吸啜が出来るようになるのではないかと仮説を立て,口蓋床に吸啜窩を付与するという改良を試みた。
    本研究の目的は口唇口蓋裂児の哺乳が円滑になることを目指し,従来の口蓋床(従来型)に吸啜窩を付与する(改良型)ことが吸啜時の舌運動に与える影響を検証することである。
    対象は口唇口蓋裂以外に吸啜力に影響を及ぼす病態のない口唇口蓋裂児8例で,口蓋裂児6例,口唇顎裂児2例であった。
    従来型と吸啜窩を付与した改良型で哺乳瓶哺乳を行い,超音波診断装置を用いて吸啜時の舌運動をB-modeで撮影した。解析にはDITECT社製,動画解析プログラム(DippMotionPro)を使用した。画像の舌表面に8箇所の計測点を設けて経時的に追尾させ,連続で得られた10吸啜波形について,各点の変位量と吸啜周期を計測し,吸啜窩付与前後で比較した。
    舌の総変位量は吸啜窩付与前・後で平均23.4±0.9mmから24.7±2.3mmへ増加した。吸啜窩付与により吸啜周期は0.78±0.04sから0.82±0.02sへ延長し,吸啜周期は安定した。改良型口蓋床で舌の変位量が増加したことから,口蓋床に吸啜窩を付与することは哺乳効率の向上に寄与する可能性が示唆された。
臨床
  • 北尾 美香, 熊谷 由加里, 高野 幸子, 池 美保, 植木 慎悟, 藤田 優一, 古郷 幹彦, 藤原 千惠子
    2018 年 43 巻 3 号 p. 216-222
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/22
    ジャーナル 認証あり
    本研究の目的は,母親が口唇裂・口蓋裂のある子どもへ疾患の説明をした際の契機とその理由を明らかにすることである。
    2016年12月から2017年5月に,口唇裂・口蓋裂の専門的治療を行うA病院に入院中の小学校低学年の口唇裂・口蓋裂のある子どもをもち,既に子どもへの疾患の説明をしている母親13名を対象に,母親が子どもに疾患の説明をしようと思った契機とその理由について半構造化面接を行った。分析は面接内容の録音から逐語録を作成し,母親が子どもに疾患の説明をしようと思った契機とその理由について語られた内容に着目して,意味のあるまとまりにローデータを抽出し,コード化,カテゴリー化を行った。
    母親の年齢は平均39.5(SD=3.9)歳,口唇裂・口蓋裂のある子どもの年齢は平均8.2(SD=0.8)歳,性別は男児6名,女児7名,裂型は唇顎裂3名,唇顎口蓋裂10名であった。子どもに疾患の説明をした時期は,就学前12名,小学校低学年1名であった。疾患の説明の契機は,【小学校入学を契機に】【手術を契機に】【子どもの疑問を契機に】【日々の生活の中で】の4カテゴリーに分類された。【小学校入学を契機に】には,<小学生になったら友達から病気のことを指摘されることがあると思ったため>などが,【手術を契機に】には<手術を受けるときに,父親が隠さず話すべきと考えたため>などが,【子どもの疑問を契機に】には,<小学校入学前までにと思っていたが,保育園の年中あたりで,友達に傷のことを聞かれたが本人が答えられず,傷のことを聞いてきたため>などが,【日々の生活の中で】には,<病気を隠そうという気持ちはなく,本人が分かるようになったら言おうと思っていたため>などが分類された。医療者は,子どもへの疾患説明に関する親の考えをアセスメントし,親が不安なく疾患説明を行えるよう援助していく必要がある。
症例
  • 栗原 祐史, 安 吉祐, 樋口 大輔, 中納 治久, 成平 恭一, 阪 光太郎, 伏居 玲香, 代田 達夫
    2018 年 43 巻 3 号 p. 223-228
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/22
    ジャーナル 認証あり
    歯槽骨延長術とインプラント義歯を適用して咬合を再建し,顎裂部の補綴処置を行った片側唇顎口蓋裂の1例を経験したのでその概要を報告する。患者は22歳男性で,上顎左側顎裂部側切歯の欠損を主訴として当科を受診した。萎縮により低位となった顎裂部の骨架橋高径の増大を図るため,両隣在歯を抜歯した上で歯槽骨延長を行い,同部にインプラント2本を埋入した。インプラント埋入後約6ヶ月経過時のアバットメント連結術に遊離歯肉移植による口腔前庭拡張術を行い,プロビジョナルレストレーションによる歯肉形態修正後,補綴装置を装着した。その結果,機能的,審美的に良好な補綴修復が可能となった。以上のことから,骨高径が不足した顎裂部にインプラント義歯を適用する際は,歯槽骨延長術による骨造成が有用と考えられる。
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