日本口蓋裂学会雑誌
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症例
異なる裂型を呈する二卵性双生児の長期観察
合島 怜央奈隅 康二香月 武山下 佳雄
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2020 年 45 巻 1 号 p. 31-39

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抄録
口唇裂・口蓋裂を伴う双生児の出現頻度は低い。中でも二卵性双生児の両者が口唇裂・口蓋裂を示すことは極めて稀で,長期観察を行った報告は極めて少ない。今回,同一の家庭環境で生育した二卵性双生児の口唇裂・口蓋裂の姉妹に対して,18歳まで一貫した治療を行ったので,その概要を報告する。  在胎36週4日で出生した双生児で,姉は右側完全唇顎裂(UCLA),妹は左側完全唇顎口蓋裂(UCLP)を認めた。妹はやや低体重であったが,両患児ともに合併する症候性の疾患は認めなかった。出生27日目に哺乳改善と口唇裂・口蓋裂の加療目的に当科対診となった。両患児とも,生後5ヶ月目に口唇鼻形成術(Cronin法+丹下法)を,UCLP症例には1歳6ヶ月時に口蓋形成術(pushback法)を施行した。両患児ともに7歳2ヶ月より歯科矯正治療が開始され,8歳11ヶ月時に顎裂部腸骨移植術を施行し,歯列内への犬歯の萌出誘導が行われた。その後,全顎的な矯正治療が行われた。両患児の希望により17歳11ヶ月時に外鼻形成術を施行した。  長期観察を通じて両患児間にいくつかの共通点と相違点が存在した。治療に際しては年齢毎に生じる問題点について関連診療科と連携をとる一方で,保護者や患児との相互理解を図りながら解決する必要があった。
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© 2020 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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