日本口蓋裂学会雑誌
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症例
口唇口蓋裂患者に磁性アタッチメントを適用した補綴歯科治療の長期経過観察
松川 良平尾澤 昌悟吉岡 文秦 正樹熊野 弘一武部 純
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2020 年 45 巻 3 号 p. 237-244

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抄録

口唇口蓋裂患者の補綴歯科治療は,顎裂部を含む欠損に対して可撤性補綴装置や固定性補綴装置が用いられていた。治療後においては口腔内の変化に対応して補綴装置の修理,調整が必要となることから,定期的なメインテナンスが重要となる。今回は磁性アタッチメント義歯を用いて治療を行った2症例の長期経過観察について報告する。
症例1は,片側口唇口蓋裂の36歳女性であり,主訴はブリッジ脱離による審美障害であった。補綴装置の設計は欠損部の隣在歯を含めて5歯を支台歯として欠損部のポンティック部に磁性アタッチメントを適用し,磁性アタッチメント義歯を装着した。補綴装置装着後19年経過している。
症例2は,片側口唇口蓋裂の21歳女性であり,主訴は上顎前歯部の審美障害であった。補綴治療は右側上顎第一小臼歯,左側上顎犬歯,第一小臼歯を支台歯として右側上顎側切歯,中切歯,左側上顎中切歯に磁性アタッチメントを用いた義歯を装着した。補綴装置装着後27年経過している。
今回,口唇口蓋裂患者に対して磁性アタッチメントを適用した症例の長期経過を経験した。磁性アタッチメントは,補綴装置の機能面,審美面において優れた特徴を有する支台装置であるが,歯の切削量や,清掃面への配慮といった留意すべき点もある。本症例では,義歯の動揺を最小に抑える設計,定期的なリコール,口腔内の診察,咬合検査を行うことにより,長期にわたり良好な経過を得ることが出来たと考える。

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© 2020 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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