日本口蓋裂学会雑誌
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症例
Le Fort Ⅰ型骨切り術により上顎骨の前下方移動とyawingの改善を図った左側唇顎口蓋裂の1例
藤本 舞佐々木 会藤本 航大真野 樹子坂下 英明時岡 一幸須田 直人
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2020 年 45 巻 3 号 p. 225-236

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抄録

上顎骨の顎矯正手術後の移動のうち,最も術後安定性を得にくいのは下方移動である。今回重度の反対咬合を有する上顎骨劣成長の片側性唇顎口蓋裂症例に対し,Le Fort Ⅰ型骨切り術による下方移動後にメッシュプレートにより骨片固定を行い良好な治療結果が得られたので報告する。
患者は初診時年齢21歳4ヶ月の左側唇顎口蓋裂の女性。前歯の反対咬合と鼻部の変形を主訴として明海大学病院に来院した。顔貌はconcave profileを呈し,中顔面の陥凹と顔面高の短小を認めた。骨格系は,上顎骨劣成長(SNA:66.5°)による骨格性下顎前突(ANB:-10.5°)を呈していた。左側に未閉鎖の顎裂を認めた。
22歳4ヶ月時に顎裂部骨移植を施行した。術前矯正治療後の24歳2ヶ月時に,Le Fort Ⅰ型骨切り術を施行した。上顎左側と右側で各々5.0mmと2.0mmの前方移動と,両側5.0mmの下方移動を行った。骨片間に空隙が生じたため,強固なチタン製メッシュプレートとスクリューによる固定を行った。術後1年9ヶ月経過後の評価では,上顎骨の前下方移動は良好に維持されていた。25歳9ヶ月時に耳介軟骨移植術および鼻唇溝皮弁による外鼻再建術を施行し,鼻尖は前方へ移動し扁平な鼻形態も改善した。

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© 2020 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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