日本口蓋裂学会雑誌
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総説
<匠の技>Furlow法を用いた早期二期的口蓋裂手術では良好な顎発育が期待できるか?
西尾 順太郎
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2022 年 47 巻 1 号 p. 1-10

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抄録

【目的】口唇口蓋裂に対する口蓋裂手術の至適時期や術式に関して,今なお多くの議論がある。音声言語機能と顎発育の両面を充足する治療法として,我々は生後12ヶ月時のFurlow法を用いた軟口蓋形成術と生後18ヶ月時の硬口蓋形成術からなる早期二期的口蓋裂手術プロトコールを開発した。頭蓋顔面発育に関する長期成績についてはすでに報告してきたが,本論文ではそれらを総括し,早期二期的口蓋裂手術プロトコール(二期群)が従来のpushback法(PB群)と比べて顎発育の面で有用であるか否かについて論じた。
【方法】本研究は大阪母子医療センター口腔外科にて出生後より継続加療を行った非症候性の片側性完全唇顎口蓋裂症例を対象とし,72例(二期群32例,PB群40例)に対する4歳時の歯槽模型計測並びに5-year-olds’ Indexによる咬合評価と,男子症例68例(二期群37例,PB群31例)に対する10歳時,15歳時のセファロ分析からなる。
【結果】4歳時における上顎歯列弓の前後径および幅径は二期群ではPB群に比して有意に大であった。5-year-olds’Indexによる咬合評価では二期群で48.2%が咬合良好と評価されたのに対し,PB群では8.0%が咬合良好と評価されたに過ぎなかった。セファロ分析では,二期群はPB群と比較して上顎前後径が有意に大きかった。一方で下顎骨体長が有意に小さく,その結果,二期群のA-N-B値はPB群より有意に大であった。また二期群の後上顔面高はPB群と比較して後上顔面高は有意に小さいことが明らかとなった。
【結論】Furlow法を用いた早期二期法はpushback法による一期的手術法に比して良好な上下顎関係をもたらすプロトコールであることが示された。

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