日本口蓋裂学会雑誌
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原著
片側性唇顎口蓋裂患者における一段階および二段階口蓋形成術による歯・歯列弓形態への影響の比較・検討
河角 久美子森川 泰紀有泉 大石井 武展坂本 輝雄西井 康吉田 秀児渡邊 章成田 真人
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2022 年 47 巻 1 号 p. 11-19

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抄録

【目的】唇顎口蓋裂患者では口蓋形成術後に生じる瘢痕組織により上顎歯列弓の狭窄や口蓋面積の減少,歯の捻転が生じる。また二段階口蓋形成手術が一段階法に比べ上顎骨の発育が良好であるという報告があるが,術式の違いが歯軸や歯列弓形態に及ぼす影響について報告しているものは少ない。
今回我々は片側性唇顎口蓋裂で一段階口蓋形成術と二段階口蓋形成術を行った患者の口蓋形態,歯軸および歯列弓形態について比較検討を行ったので報告する。
【方法】東京歯科大学千葉歯科医療センター矯正歯科に来院した片側性完全唇顎口蓋裂患者を対象とし,一段階口蓋形成術(一段階群),二段階口蓋形成術(二段階群)で分類した。初診時の上顎歯列石膏模型を3Dスキャナを用いて三次元歯列画像を再構築し,三次元計測ソフトウェアを用いて計測した。
【結果】一段階群と比較して二段階群は歯列弓幅径に有意差は認められなかった。歯列弓長径はすべての部位で大きい値を示した。口蓋高径は第一大臼歯部で小さかった。口蓋断面積は二段階群の乳犬歯間では大きかったが,第一大臼歯間では小さかった。口蓋表面積は乳犬歯間で大きかった。どちらの手術法においても,患側中切歯は近心への捻転を示し,遠心傾斜を示した。一段階法群は患側第一大臼歯の近心への捻転が認められ,一段階群・二段階群共に患側中切歯の遠心傾斜が認められた。どちらの手術法でも患側の前方セグメント角度は有意に大きく,後方セグメント角度は有意に小さかったが,術式による有意差は認められなかった。
【考察】二段階群では上顎歯列弓長径がすべての部位で有意に大きかったため,上顎歯列弓・口蓋の前後的発育の抑制が少ないことが示唆された。
またどちらの手術法でも,顎裂部への小セグメントの回転による,歯列弓前方の狭窄が認められた。小セグメントの回転は術式による差は認められないことが示唆された。

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© 2022 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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