唇顎口蓋裂の初回手術として,顎裂閉鎖を目的とした歯肉骨膜形成術(GPP)を行う施設が増えている。多くの症例でGPPに先立ち,裂隙の整形を目的とした術前顎矯正(PIO)を行っている。このようなPIOやGPPによって,歯槽堤の狭小化や上顎骨の劣成長をきたすという報告があり,治療成績の正確な評価が重要と考えられている。そこで,完全片側性唇顎裂(UCLA)乳児におけるPIOとGPP施行直後の上顎骨の三次元形態を評価した。
神奈川県立こども医療センターで生後3~9ヵ月に初回手術を行った完全UCLA乳児(A群)と不完全UCLA乳児(B群)の術2週間後に鎮静下にて撮影されたCTを資料とした。A群の24例は全例PIO後,初回手術としてGPPと口唇形成術を同時施行した。B群の11例はPIOを行わず,生後3~9ヵ月に初回手術として口唇形成術のみを施行した。A群とB群間の上顎骨前後径,上顎骨前方の垂直的位置,上顎骨後方垂直的位置,上顎骨幅径,ANS側方偏位量を計測し比較した。なお,本研究では唇顎口蓋裂とは関連のない乳児(C群)をA・B群と同時期の乳児成長の指標として用いた。C群は25例で,滲出性または難聴を伴う中耳炎に罹患し,その検査のためにCT撮影を行った。
A群におけるANS側方偏位量は,B群よりも有意に大きかった。しかしながら,上顎骨前後径,上顎骨前方・後方の垂直的位置,上顎骨幅径は,2群間で有意な差はみられなかった。
以上の結果より,PIOによる顎裂の整形は,術直後の上顎骨の狭窄や短縮を生じない可能性が高いと考えられた。