日本口蓋裂学会雑誌
Online ISSN : 2186-5701
Print ISSN : 0386-5185
ISSN-L : 0386-5185
原著
口蓋裂児に対する鼓膜換気チューブ留置術の時期の検討
―1歳未満と1歳台に留置したものを中心に―
小宅 功一郎甘利 泰伸三好 直人今泉 直美井上 由樹子志村 智隆小林 斉
著者情報
ジャーナル 認証あり

2024 年 49 巻 1 号 p. 16-22

詳細
抄録

 口蓋裂児は滲出性中耳炎に高率に罹患し,難治性であることが知られている。新生児聴覚スクリーニングが普及し難聴の早期診断・早期療養の重要性が強く認識され,口蓋裂児の滲出性中耳炎に対して生後1年以内に鼓膜換気チューブ留置術(以下チューブ留置)を行う症例も増加している。今回われわれは,チューブ留置を行う時期による耳漏の頻度や家庭での術後の様子や家族心理などの違いを問診調査し検討した。対象は2018年1月から2022年10月の間にチューブ留置を施行し,半年以上が経過している83例とした。チューブ留置施行時期は,1歳未満が30例,1歳台が40例,2歳以降が13例の3群に区分した。結果は,患児の音への反応が改善したと感じたものは各群でそれぞれ27例(90%),26例(65%),7例(53.8%)であった。また,患児の情緒面で改善を感じたものは8例(26.7%),3例(7.5%),0例(0%)であった。生活面,情緒面で1歳未満群で改善を感じている家庭が多いことが分かった。各群において,耳漏が一度もなかったものは4例(13.3%),20例(50%),5例(38.5%),1週間以上耳漏が停止しなかったものは12例(40%),10例(25%),3例(23.1%)であり,1歳未満群は耳漏がでる可能性が高く,また停止しにくいことが分かった。しかし,家族心理として,手術を受けてよかったと感じた家庭は各群で27例(90%),28例(70%),8例(61.5%)であった。また耳漏が多い一方で病院への通院についてを負担と感じていた家庭は各群で3例(10.0%),12例(30%),2例(15.4%)であった。乳児期のチューブ留置は耳漏は多くなるものの,患児の生活面や情緒面の改善している様子や中耳炎を治療できた安心感から,手術を受けてよかったと考える家庭は多く,耳漏のデメリットを理解してもらったうえで早期のチューブ留置も選択肢として提示してもよいのではないかと考えられた。

著者関連情報
© 2024 一般社団法人 日本口蓋裂学会
前の記事 次の記事
feedback
Top