日本口蓋裂学会雑誌
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口蓋裂と耳疾患
田坂 康之倉田 響介川野 通夫本庄 巖
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1986 年 11 巻 2 号 p. 206-212

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抄録

従来より口蓋裂患者に滲出性中耳炎をはじめとする耳疾患が多発する事はよく知られている.今回我々は, 口蓋裂患者384耳を観察し以下のような結果を得た.
1.耳疾患の種類と頻度
対象384耳にみられた耳疾患は, 滲出性中耳炎123耳(32%)を最多として慢性中耳炎, 上鼓室陥凹, 真珠腫性中耳炎, 癒着性中耳炎, 中耳・内耳奇形等があり, 口蓋裂例の耳疾患保有率は44.5%であった.
2.耳管咽頭口の異常運動と耳疾患
耳管咽頭口には, 様々な異常運動が見られたが, これを嚥下, 発声, 開口いずれかの動作で耳管咽頭口に開大のみられる群とそうでない群とに分けて中耳疾患の有無を検討してみると, 開大群では中耳疾患罹患率は23%と低いのに対して, 非開大群の中耳疾患罹患率は66%と高く, しかも滲出性中耳炎が61%を占めていた.このことから嚥下, 発声, 開口いずれの動作でも咽頭口が開大しない例や閉塞する例では中耳疾患が有意に多いことがわかった.
3.裂型と中耳疾患の関係
口蓋裂既手術群では粘膜下口蓋裂が他の裂型に比して耳疾患が少なかった.粘膜下口蓋裂例では既手術群が未手術群より耳疾患が少なかった.
4.裂側と中耳疾患側との関係
右側および左側完全唇顎口蓋裂例においては裂側と疾患耳側との間には全く関係がなかった.また, 各裂型とも両耳とも正常か両耳とも異常かの例が大半を占め, 片側性の耳疾患例は少なかった.
5.咽頭弁の有無と耳疾患
咽頭弁と耳疾患には相関がなかった.
6.鼻疾患の有無と耳疾患
内視鏡的な上咽頭汚染の有無で中耳疾患罹患率を調べてみると, 上咽頭汚染群に危険率1%で有意に中耳疾患が多いことが分かった.

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© 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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