抄録
本研究は唇裂口蓋裂の哺乳障害の臨床における実態を明らかにし, 先に我々が考案した口蓋裂用乳首が障害の改善に寄与するか否かについて臨床的効果の検討を行った.被験対象は哺乳障害を訴えた完全唇顎口蓋裂乳児20症例であった.初診時における哺乳障害の臨床的所見, 被験乳首使用前および使用後1週間目, 1ヵ月目, 2ヵ月目, 3ヵ月目の哺乳状態(哺乳量, 哺乳回数, 哺乳時間)ならびに体重増加等の推移について観察した結果について検討を行った.その結果, 初診時にみられた哺乳障害は, 鼻腔粘膜での漬瘍形成, 経鼻腔胃管栄養法の併用, 長時間の哺乳, 乳汁を口腔内に注入する等であった.初診時における平均哺乳量/日および哺乳時間/日は被験乳首に切り替えた1週間目で哺乳量の著しい増加を示し, 哺乳時間は短縮した.3ヵ月目の哺乳量は正常児における標準哺乳量の範囲内にあった.体重増加の推移は各観察時期を通じて常に正常標準値に近似した値を示し, 3ヵ月目では平均で6kgを越えた値を示した.