日本口蓋裂学会雑誌
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正中口蓋縫合欠如が顎発育に及ぼす影響に関する実験的研究
第2報:ラット正中口蓋縫合切除後の計測学的観察
永井 直人
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1987 年 12 巻 2 号 p. 103-116

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抄録
口蓋裂における顎発育障害の原因を解明することを目的として,口蓋の側方発育に主要な役割を果たすと考えられている正中口蓋縫合に着目し,ラットを用いた実験的研究を行い,計測学的観察から,以下の如き結果を得た.
1.口蓋の側方発育は無処置群に比して,正中口蓋縫合切除群で最も大きく抑制され,以下,正中口蓋縫合以外の骨切除群,口蓋粘膜骨膜剥離群の順であった.
2.粘膜骨膜剥離による発育抑制は他の要素に比べるとわずかで,この侵襲による顎発育への影響は,術後の短い期間だけに限局していることが示唆された.
3.正中口蓋縫合以外の骨を切除した場合には,術後40日目以降抑制率は減少してゆくことから,骨切除による発育抑制は比較的大きいが,これによる影響は骨組織の修復によって骨の連続性が回復するまでの期間でのみ起こると思われた.
4.正中口蓋縫合の欠如による発育抑制は全ての要素の中で最も著明で,かつ長期間にわたって持続することが明らかとなった.
5.口蓋の側方発育に対する外科的侵襲と正中口蓋縫合欠如の影響は,後者が前者を大きく上回っていることが明らかとなった.
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© 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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