抄録
正常児(N),唇顎裂(CL:不完全唇裂ICL,完全唇顎裂CCL),軟口蓋裂(SCP)ならびにHotzレジン床装着を行った唇顎口蓋裂(CLP:不完全唇顎口蓋裂ICLP,完全唇顎口蓋裂CCLP,片側唇顎口蓋裂UCLP,両側唇顎口葦裂BCLP)および硬軟口蓋裂(HSCP)の哺乳時における乳首内圧を記録するとともに,体重発育速度,1日哺乳量,規定哺乳時間などを調べ,唇裂および口蓋裂児における哺乳障害の特徴とHotzレジン床による哺乳障害の改善効果について検索し,次の如き結果を得た.
1.CL群およびSCP群はN群と比較して異なった乳首内圧波形パターン出現率と小さな乳首内陰圧および吸畷圧を示した.
2.床非装着時のCLP群およびHSCP群はN群,CL群およびSCP群とかなり異なった乳首内圧波形パターン出現率を示し,乳首内陰圧および陽圧ならびに吸畷圧は明らかに小さかった.
3.上記の検査で認められる哺乳機能の低下は裂の重症度に関連し,一般にCCL群はICL群より,またCCLP群はICLP群より,BCLP群はUCLP群より哺乳機能の低下が大きかった.
4.CLP群およびHSCP群ではHotzレジン床装着によって乳首内圧波形パターン出現率,burst時間および吸畷活動時間率がそれぞれN群,CL群およびSCP群に近づく傾向を示し,吸畷率は上昇し,乳首内陰圧および陽圧ならびに吸畷圧が増大して哺乳障害の大きな改善が認められた.
5.床装着を生後1ヵ月未満に行ったCLPI群は床装着を生後1ヵ月以後に行ったCLPII群よりも哺乳障害の改善が大きかった.
6.CL群,SCP群,CLP群およびHSCP群の体重発育速度はN群よりも0般に劣っていた.しかしCLPI群はCLPII群よりも体重発育速度,1日哺乳量および規定哺乳時間において優れていた.したがってHotzレジン床による治療は生後できる限り早期に開始すべきである.