抄録
口唇裂口蓋裂の多くは染色体異常症候群や単因子性遺伝性疾患ではなく,多因子性遺伝性疾患とされている.多因子性遺伝性疾患に属する口唇裂口蓋裂の遺伝要因を明らかにするために,単発例と多発例における染色体異常を調べた.異形染色体を含む染色体異常の頻度は,単発例66例中疑い例1例(1.5%)であったのに比べて,多発例では43例中5例(11.6%)であった.
より遺伝的影響を受けていると考えられる多発例で高い頻度の染色体異常がみられたが,特定の染色体部位に限られていないことから,これらの異常は直接的に口唇裂口蓋裂を発症させるものではないと思われる.