日本口蓋裂学会雑誌
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発音時口腔鼻腔流出気量についてフローネイザリティーグラフとサウンドスペクトログラフによる同期観察
松井 義郎鈴木 規子今井 智子山下 夕香里道 健一
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1987 年 12 巻 2 号 p. 175-192

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抄録
健常人および口蓋裂術後患者の発音時口腔鼻腔流出気量について研究することを目的として以下の検討を行った.発音時の口腔および鼻腔よりの流出気量を同時に測定し,画面上に表示できるリオン社製フローネイザリティーグラフSN-01(FNG)を用いてデータを採取した後,FNGと同社製サウンドスペクトログラフSG-07とを同期させるシステムを開発し,まずFNGの分析方法,機械的精度について検討したところ,発音時の口腔鼻腔流出気量を総呼気流量に対する鼻腔よりの流出気量の比(NFR)として表すことにより,もっとも信頼性のあるデータが得られることが明らかとなった.
ついで,本法を健常成人20名(男性10名,女性10名,24歳-26歳)およびスピーチエイドを装着している口蓋裂術後患者10名(男性4名,女性6名,6歳-31歳)に適用し,NFRの臨床的意義について検討を行ったところ,次のような結果が得られた.
1)同期システムにより発音時の口腔鼻腔流出気量を高い再現性で経時的,定量的に観察することが可能となった.
2)健常成人20名での検討では,鼻咽腔閉鎖時と非閉鎖時(2名の/a/発音時,全例の通鼻音発音時)とのNFRの区別が可能であった.
3)口蓋裂術後患者では,スピーチエイド非装着時のNFRは健常成人のNFRと比較して大きく,各症例間でも大きなばらつきを見せたが,スピーチエイド装着時のNFRはほとんどの症例で健常範囲に入るか,もしくは極めて近い値をとった.また通鼻音においても,健常成人と同様の値を示し,スピーチエイド装着により閉鼻の傾向を示す症例はみられなかった.
4)口蓋裂術後患者のNFRと聴覚印象との関係は開鼻声では必ずしも関連性は認められなかったが,破裂音,摩擦音の歪みとの間では高い関連が認められた.
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© 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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