抄録
口唇裂・口蓋裂患者の頭蓋顔面形態における先天的影響を明らかにするために,九州大学歯学部附属病院口腔外科において形成手術を行った口唇裂・口蓋裂児のうち,両側性口唇裂・口蓋裂児を除いた片側性唇裂(UCL),片側性唇顎裂(UCLA),片側性唇顎口蓋裂(UCLP),口蓋裂(CP)総数392名の口唇裂群では口唇形成術時,口蓋裂単独群では,口蓋形成術時に撮影した側貌頭部X線規格写真の検討を行った.
本研究では,破裂型別の性差と,クラスター分析による同一裂型内における頭蓋顔面形態の分布の検討を行い,次の結果を得た.
1.UCLA,UCLP,CPにおいて男児は女児に比べ,頭蓋冠,頭蓋底,および上顎における顔面高が有意に大きな値を示した.また,UCLPにおいてのみ,女児は男児より下顎骨体長が有意に小さかった.
2.クラスター分析の結果,UCL,UCLAは3群に,UCLP(男児)は2群に,UCLP(女児)は3群に,CP(男児)は2群に,CP(女児)は3群に細分化することができた.
3.口唇裂・口蓋裂群では,細分化にあたり,有効な計測値として頭蓋冠の大きさ,頭蓋底の大きさ,上顎における顔面高が主として選択されたが,なかでも上顎における顔面高は各破裂型において強く作用していた.
4.口蓋裂単独群においては,下顎骨の大きさも細分化にあたり,有効な計測値として選択され,そして分類された群間には,重篤な奇形の合併率に有意な差がみられた.