日本口蓋裂学会雑誌
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口唇裂口蓋裂患者の矯正治療の難易鑑別に関する研究~昭和大法を用いて~.
滝澤 良之
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1988 年 13 巻 1 号 p. 31-46

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抄録
本研究の目的は,特異な咬合を有する口唇裂口蓋裂患者の歯科矯正治療における難易鑑別を客観的に把握する方法の開発にある.側貌頭部X線規格写真の新たな計測項目として柴崎・福原による∠AYBと小森・鈴木によるBiteIndexの組合せによる昭和大法について検討した.
資料としては,昭和大学歯科病院矯正科を受診した片側性唇顎口蓋裂患者と対照群として前歯部反対咬合をもつ0般矯正患者とした.対照群のうち下顎骨の外科的手術により前歯部の被蓋を獲得した症例群と,矯正処置のみで治療した症例群に分け,前者を難症例,後者を易症例として判断した.これらについての初診時の側貌頭部X線規格写真により,鑑別基準について検討し,線型判別関数Z=-1.92479X1+0.74137X2-5.54610,Mahalanobis' generalized distance D2=10.5691,X1;∠AYB,X2;B.I.を求めた.
一方,片側性唇顎口蓋裂の患者は,成長の個人差が大きいとされるので,暦齢による分類を避け,いわゆるHellmanの歯牙年齢により3群に分けた.
線型判別分析で得られた一次式をもとに手術患者群を基準としたときの片側性唇顎口蓋裂患者の判別力から,判別率を求めたところ,それぞれ歯牙年齢IIA-IIC群(乳歯列期群)3.9%,IIIA-IIIB群(混合歯列期群)14.9%,IIIC以上群(永久歯列期群)26.5%で,難症例であることが鑑別され,かつ歯列の成長とともに判別率が増加することが示された.
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© 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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