日本口蓋裂学会雑誌
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妊娠時の血液性状の変化と口唇・口蓋裂発生について
実験的研究
加納 欣徳
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1988 年 13 巻 2 号 p. 217-225

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抄録
妊娠にともなう母体の血液性状の変化と胎児発育との関連について,疫学的あるいは実験的に数多くの研究がなされているが,口唇・口蓋裂の発生との関連をみた研究はみうけられない.そこで,著者らは妊娠時の血液性状の変化と口唇・口蓋裂発生との関連について疫学的な調査を行ったが,明らかな関連を認めることはできず,実験的研究の必要性を示唆する報告をした.今回,妊娠時の血液性状の変化と口唇・口蓋裂発生との関連について,A/J系マウスを用いた実験的研究を行ない,以下の結果を得た.
1.妊娠前のA/J系マウスの血液性状は,WBC7.3±2.32x103/mm3,RBC1045±58.1x104/mm3,Hb17.3±0.789/dl,Ht48.3±3.33%,MCV46.2±121μ3,MCH16.6±0.59μμ9,MCHC35.9±1.66%であった.
2.A/J系マウスにおいて,妊娠にともないRBC,Hb,Htは有意に低下していた.これはヒトにおける妊娠あるいは妊婦貧血と同様な変化が,母獣におきているものと考えられた.
3.A/J系マウスでは,口蓋裂胎仔をもつ母獣は,もたない母獣に比べ,妊娠時の貧血がより高度におきている傾向が示唆された.
4.妊娠10日目のA/J系マウスにおいて,脱血による高度の急性貧血は,口蓋裂誘発の一要因になると考えられた.
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© 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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