抄録
1)哺乳時の舌運動メカニズムの解明と,唇顎口蓋裂児におけるHotzレジン床装着による哺乳運動改善効果の検索を目的として,超音波診断装置を用いて哺乳時の舌運動を記録するシステムを開発するとともに,得られた超音波エコー像を汎用の画像解析装置に応用する舌運動画像解析システムを考案した.
2)本システムは,被験児に異和感を与えることなく,通常と同様の哺乳時における舌矢状断の運動を記録し,かつ時間的変化を把握できるものである.
3)正常児の哺乳時舌運動には2種類の波があり,大きな波は盛り上がりの範囲の増加で,小さな波は別個に移動していた.唇顎口蓋裂児のHotzレジン床非装着時には上唇,歯槽部および口蓋と舌との間で乳首を圧迫する動作が小さく,舌の盛り上がりが低かった.Hotzレジン床装着によって哺乳時の舌運動はリズミカル,かつ持続的で,大きなストロークとなり,正常児のそれに近づいていた.